メルティング・バースディ



ソファにどっかりと座るマリクは先程から何度も壁掛けのアナログ時計と廊下からリビングに繋がるドアとを交互に見ては苛立っていた。一時間ほど前にメールしたものの返事は来ない。電話もかけてみた。が、着信音が獏良の部屋の通学鞄の中から聞こえてきたのでこれではメールも返ってくる筈ないと眉を寄せる。
ここの所バクラとのセックスが激しく、昨晩もたっぷりとベッドで事に至ったので疲れ果てて日付が変わる前に眠ってしまった。目覚めると当然日付は変わっていて朝というには遅い時間だったのだが、家には自分以外誰もいない。探したけど見当たらなかった。
変だ、とまずマリクは思った。だって今回は世帯主でもあり二つの魂の肉体の持ち主でもある獏良にもきちんと告げているのだ。

「……なんでいないんだよっ!」

12月23日、今日が自分の誕生日だということを。




*********************


「あーー…さっび」
『なんでだよー。ちゃんと僕服着てきたでしょ?』
マフラーで鼻まで覆ったバクラが肩を震わせながら呟いたのを聞き、意識体としてバクラの横に現れた獏良がぷりぷりと怒り出した。
「あのなぁ、だったら家出てから帰るまで宿主が出とけよ」
『いいよー別に僕が出ても。でもそしたらマリ君にちゃあんと言うからね。「僕が一人で買ってきたよ」って^^』
「へーへー分かりました」
『ていうか昔は魔王だか盗賊の王様だったくせに寒いとか思うんだねー。お前まるで普通の人間みたい』

そりゃあ宿主普通の人間のアンタの体借りてるからな、と思いつつも返事をするのも寒くて億劫でフゥ…と息を吐いた。
街は明日のイブと明後日のクリスマスのムード一色に染まっている。そしてすぐにやってくる正月の準備も所々に見られて、大変なこった、とバクラは鼻を鳴らして呆れた。
正月の準備?ンなもんクリスマスが終わったら宿主にやらされるに決まってるだろ。オレ様がな!!(泣)
バクラの片手には大きな紙袋。イブの前日という日に生まれてきたマリクの為に随分前から予約していた物を取りに行ったのだ。今年オープンしたその店はパリで修行してきたパティシエがどうたらこうたらだとかでテレビに取り上げられ、連日長蛇の列。ティータイムの時間帯前には売り切れなどざららしい。
しかしバクラは流行り物だとかには全く興味が無い。甘いものなら尚更興味が無かった。
肉体の持ち主である獏良了もどうやら好物のシュークリーム以外の洋菓子には特別反応しないようだ。
だが、夕食を取りながらなんとなくつけていたテレビでその店が放送された際に、
「わあ。すごいなここの店の。食べてみたいな」
だなんてポツリと言われたらどうよ。買うしかねェだろ!!!?
その時は獏良が表に出ていたのでバクラは心の中でマリクの呟きをひっそりと、しかしがっつりと聞いていたのだが、
「うんそうだね〜。でもすごい人気で買えないみたいだね〜」と答えた獏良もどうやら同じ考えだったらしい。夕食後にマリクが風呂に入り誰もいなくなったリビングでバクラが意識体として現れた途端、
「マリ君のために何があっても絶対手に入れるよ!」と興奮しながら話しかけてきたのだ。

『うーんでも買えて良かったね〜』
「あれからすぐ電話で予約したからな」
『はあ〜〜早くマリ君の喜ぶ顔が見たいな〜〜!あ、書置きしてないし携帯忘れてるけど大丈夫だよね?』
「大丈夫だろ。まだ寝てんじゃねぇの?」
ここの所セックスの歯止めがきかなくなってきているのが自分でもよく分かる。寒くて人肌恋しいというかマリク肌恋しいというか。
昨晩だって散々色々な所を舐めて吸って突っ込んで吐き出したりしたので、きっとマリクは疲れて起きてないだろう。自分も腰を使いすぎたせいで朝起きるのがだるかったぐらいだ。
獏良はマリクが朝遅いのを「きっとグールズの総帥をやってた頃は全然寝れてなかったんだよ。だって僕より年下なのにあれだけの大人数を纏め上げたり洗脳して操ってたんだからさあ」と思っているらしく、起こすどころかもっと寝かせようとする。
流石のバクラも体の持ち主に対して、毎晩セックスしまくってるせいでマリクは疲れて起きられない、とは言えなかった。
「ヒャハハ…まあ今日もとことんヤり尽くすけどなァ…!」
『え、なに?何か言った?』

「何ボソボソ言ってんだ銀髪の兄ちゃんよお」

「ア?」
『ふぇ?』




*********************




「ううう…遅い!遅すぎる!」
雑誌は読みつくした。テレビは特に面白い番組が無い。ゲームは難しい場面で躓いてしまったのでお手上げ状態。
とりあえず一通りの時間つぶしをしてはみたが獏良、もしくはバクラは帰ってこない。書置きの一枚も見当たらなかったので探しに行くことも出来ずにいた。
帰りを待っている間に姉イシズと従者リシドからもらった温かい祝いの言葉は心の底から嬉しかった。ついでにグールズ総帥時代に世界各地で操っていた男達からとっくの昔に洗脳を解いた筈なのに大量のメールが届いており、更には現在の居場所が分からないとの事でリシドの方に花束やらプレゼントやらが送りつけられているらしい。大人数の男達からの行為には当然ぞっとして複雑な気持ちになったが、それでも少しは嬉しかった。
けれど今のマリクが一番言葉をもらいたい相手は、同居を持ちかけ日本での滞在の世話してくれている獏良とバクラの二人なのだ。何か特別なプレゼントが欲しいわけではない。祝いの言葉をもらえて、一日一緒に過ごせたらそれで良かったのに。

落ち始めた太陽を部屋の中から見つめていると、玄関の方からガチャリという音が聞こえた。 遅い、何やってたんだ、と文句の一つでも言わなければ気が済まなかったマリクはソファから立ち上がって廊下とリビングとを分けるドアへと向かおうとした。だがそれより先にリビングに入ってきた人物の姿にぎょっとしてしまう。
「悪ィ。遅くなった」
「ば、バクラ…?」
マリクが驚くのも無理はなかった。帰宅したバクラは雨など降っていないのに全身ずぶぬれの姿で、なのに乾いた大きな紙袋を手に持って妙に苛立っていたからだ。
つい先刻までの自分の苛立ちなどすっかり飛んでしまったマリクは何か声をかけようとしたのだが、そんなマリクをよそにバクラは紙袋から箱を取り出して冷蔵庫に仕舞い、「風呂入ってくる」とだけ言って出て行ってしまった。
残されたマリクは戸惑うしかない。
「…なんなんだよ一体…」
バスルームからシャワーの音が聞こえ出したのでそっとリビングから廊下に出てみる。バクラが歩いた所の床はしっかりと濡れ、玄関の靴もぐしょぐしょになっていた。
今日から昨日にかけてバクラを怒らせた覚えは無いので、きっとなんらかで濡れてしまったことに怒っているのだろう。
ひとまず自分が出来ることといえば水滴というには多すぎるほど水が垂れた廊下やリビングを拭くことだったので、取り込んでいた洗濯物からタオルを手にとった。
「はあ…」

この調子だと気まずい夕食になりそうだ、と肩を落としながらしゃがみ込んでタオルで水気を拭き取っていく。なにもボクの誕生日にアクシデントが起こらなくたっていいじゃないか、となんだか悲しくなってきた。
メモも連絡も寄こさずに出掛けて帰ってきたバクラ(獏良)に文句を言いつつも、夕飯は楽しく食べて、ソファに座ってココアでも飲みながら喋って、……夜はきっといつも以上に濃厚に…バクラとセックスするつもりだったのに…。

「何があったんだよ…もう…」
「ごめんねマリ君〜…」
「わあっ!ばっ獏良!?」
突如背後上空から降ってきた情けない声に驚いて振り返ると、そこには湯気を纏った獏良が上下スウェット姿で立っていた。
「帰ってくるの遅くなってごめんね…あ、床拭いてくれてありがと〜」
「いや、いいけど…それより獏良、大丈夫か?」
いつも以上にぽやぁんとした獏良は左右にふらふらと揺れていて、よく見ると視線が定まっていない。
「多分熱があるんだと思う…あわっ」
「え?ちょ、危ないっ」
立っている気力が無くなったのか倒れかけた獏良をすんでのところで抱き止める。その際肌が触れたのだが、確かにいつもより熱かった。
「えへへ〜マリ君にぎゅってしてもらっちゃったぁ」
「はぁ…とりあえずベッドに連れてくから。そしたら何があったか話してもらうからな」
分かったー、と力なく答えた体を支えて獏良の部屋へと向かう。
冷え切った布団の中に入る際に辛そうな表情をした獏良に、これは熱が上がっていってるんじゃないか、と心配になった。

「マリ君…」
「ん?」
熱で潤んだ瞳で見つめてくる獏良が布団の中から手を伸ばしてくる。その表情は小さな子供のようで、マリクはふっと顔を和らげて近付き、力の無い手をやんわりと包み込んだ。
「誕生日おめでとう…ごめんね、大事な日なのにこんなことになっちゃって…」
そう言って弱々しく笑ってくる獏良。ううん、とマリクは顔を横に振った。
「いいよ獏良。ありがと。早くよくなるといいな」
「うん…あ、そうだ。今日ね」
マリクの言葉に気分が多少和らいだのか、ふにゃりと笑う獏良が続けて話そうとしてくる。先程何があったか言うように言ったのは自分だ。だが辛そうな様子に、よくなってからでいいから、と言うと包んでいた手が弱い力で握り返してきた。
「それじゃあ流石にアイツに悪いからね…」
「獏良?」
「今日はね、予約してたマリ君のバースデーケーキをアイツと取りに行ってたんだ」
「ボクの…」
「メモ書き残してなかったし、携帯忘れていったのも気付かなくてごめんね…」
ゆっくりと話し続ける獏良に、マリクはまたううん、と顔を横に振った。
「受け取って店を出てまっすぐ帰ってたんだけど…しばらく歩いてたらね、怖いお兄さんに絡まれちゃったんだ」
「え!?」
「その人の大事な人がそこのお店のケーキが欲しかったみたいで、でもお店のケーキは売り切れてたし、女の人や子供連れを脅すのは可哀想だと思ったらしくて」
「いや、いやいやいや…誰が相手でも駄目だろそれは。…まぁボクが言えた義理じゃないけど…」
過去の自分の行いを思い出したマリクは顔を引き攣らせる。

「それで掴みかかられちゃって。その時表に出てたのはアイツだったから、上手く相手の手首を捻ってすぐ傍に流れてた川に突き落とそうとしたんだけど…服引っ張られて一緒に落ちちゃった」
「落ちちゃったって…怪我はないのか!?」
「ああうん。街中に流れてる浅い川だったからね。でもそれでキレちゃったアイツが僕の体で相手を殴りに殴っちゃってさ…」
だからちょっと拳が痛いくらいかな、と苦笑する獏良。その光景が容易に想像できてしまいマリクは溜め息を吐いた。
「突然絡まれた挙句自分まで冬の川に落ちてずぶ濡れか…。まぁでも今回はあの男がキレるのも分かるよ」
「あはは……でもね、アイツが頭にきたのはそのことが原因じゃないんだよ」
自分もそんな目にあったらバクラと同じような行動を取るだろうと思って言ったのだが、布団の中の獏良は熱がある頬を赤らめさせたまま否定した。
「じゃあどうして」
「服を引っ張られた瞬間、咄嗟に袋を手放したからケーキは川に落ちなかったんだけど…袋…横に倒れちゃってね……僕もだけど、アイツもマリ君に喜んで欲しかったみたいだから」
「そうだったんだ…それで…」

獏良の言葉にようやくマリクは納得する。だから先程、リビングに入ってきた際に自分と目を合わせようとしなかったのか。…居た堪れなくて……。
「だから、ケーキ、ごめんね。一応持って帰ったけど多分中身は…」
「今日の獏良は謝ってばっかりだな」
「だってマリ君」
「いいから寝てなって。すごい嬉しいよ、ありがとう」
熱のせいもあるのか今にも泣き出しそうな獏良の頭を撫でて礼を述べる。そんな二人の思いを告げられて、嬉しくない筈がなかった。
「ケーキ、食べてもいいか?あ、勿論獏良の分は残しておくけど」
「それはいいけど…でもいいの?ぐちゃぐちゃかもしれないんだよ」
不安げな表情をする獏良に、再び頭を撫でる。
「ボクがいいって言ってるんだからいいんだ。だから獏良は沢山寝て早く元気になるんだぞ」
「…うん。ありがと」
それじゃあ、と立ち上がって出て行こうとしたマリクがドアを開ける直前、後ろから声をかけられる。
「もう一度言うけど、マリ君、誕生日おめでとう。起きたらちゃんと、お祝いさせてね…」
「ありがと獏良。おやすみ…」
そっと部屋のドアを閉め、獏良達が体調を崩したのに不謹慎だ、と思うも嬉しさで口元が緩むのを抑えられずにマリクはリビングへと戻っていった。


*****

ケトルを火にかけ沸騰するのを待つマリクは、椅子に腰かけて両手で頬杖をついていた。
獏良が自分が喜ぶのを楽しみにしててくれた。それにあの男、バクラも。
心がくすぐったいような、クッションに顔を埋めてしまいたいような。二人と過ごすようになってからいろんな『初めての気持ち』を知った。
今のこの気持ちだってそうだ。家族からもらう言葉で抱く気持ちとは微妙に違っている。
(…でも、バクラの口からも、聞きたかったな)
もしこんなことにならず普通に一日を過ごせていたら、茶化しながら、けれど最後は真面目に、誕生日を祝う言葉を言ってくれただろう。
獏良と同じ肉体の筈なのに全くの別人の、あの薄い唇で、低く囁いて、肌に触れて、キスをしてきて、愛撫されて……

「はっ!?」
空気を裂くケトルの笛吹き音に現実に戻されたマリクは慌てて立ち上がり火を止めに走った。用意していたマグカップにティーパックを落とし入れ、とぽとぽと湯を注いでいく。
「何考えてるんだボクは……あれ?」
頭を振ってケトルを戻したマリクは冷蔵庫を開けて大きな正方形の箱を取り出した。向きを変えた際に箱にプリントされた店舗のロゴマークが目に留まったのだが、どこかで見た覚えのあるソレ。
すぐに思い出して、マリクはまたもなんとも言えない幸福感に包まれた。
テーブルの上に置いて箱を開けると、真っ白なクリームの上に大粒の苺が乗ったショートケーキと甘い匂いが。
獏良の言っていた通り隅に寄って丸かったであろうケーキの形状は崩れていたが、嬉しいことに変わりは無い。
元の場所から転がり落ちて生クリームに張り付いていたチョコプレートには、『Happy Birthday Marik』の文字が書かれていた。
「…二人とも、ありがとう」
鼻の奥にツンとくるものを感じながら食べる分だけを切り取って皿に乗せる。指先についたクリームを舐め取ると優しい甘さが口内を満たした。
ティーパックを取り出し砂糖と牛乳でぬるめのミルクティーにする。椅子に座ったマリクは崩れた生地とクリームにフォークを入れ、すっと切り取って口へと運んだ。
「………おいしい」
ありきたりのショートケーキの筈なのに今まで食べたケーキの中で一番美味しいと思った。それはきっと人気店の物だから、というだけではないことはマリクにははっきりと分かっていた。

あまりの美味しさに一口二口と止まらず、気付けばミルクティーを飲みながら二切れ食べ終えていた。
「はぁ、美味しかった…あとは明日一緒に食べようかな」
唇をぺろりと舐め、残りのケーキが入った箱を冷蔵庫に片付ける。マグカップと生クリームのついた皿も片付けようとしたところで獏良の様子が気になったマリクは、以前自分が熱を出した際に寝ている間に額に冷たいシートを貼ってもらったのを思い出し、カップと皿を放置したままチェストを漁った。
「どこに置いてるって言ってたっけ…あ、あったあった」
目当ての物を見つけたマリクはリビングから出てそっと獏良の部屋のドアを開けた。
しんと静まった室内。電気はつけられないが明かりがないと分からないので扉を少しだけ開けたまま部屋に入る。
足音を立てないように近付き額に手を当てると、随分熱が上がっているようだった。苦しいだろうな…可哀想に、と同情しつつ手を離すと、閉じていた瞼がゆるりと開いて自分のことを見上げてきた。
「ん…」
「ごめん、起こしちゃったな。冷たいシート貼ったらすぐに出て行くから」
小声で言いながらシートのフィルムを捲ると、ベッドで寝る獏良からククッと上がった低い笑い声。
「…よぉマリク、看病してくれてんのかぁ…?」
「バクラ…!あっ起きるなよ!」
声が聞きたいと思っていた男はいつもの嘲笑うような笑みを浮かべていたのだが、その顔は赤く首元まで汗が垂れている。獏良了という一人の肉体の中で人物が入れ替わっただけなので、体が負ったダメージ、つまり今回なら熱を共有しているのだ。
それなのに起き上がろうとしてくるのでマリクはバクラの体をベッドに押し返した。

「…ンだよ、いいじゃねえか少しぐらい」
「駄目だっ!早く治さないとお前も獏良も辛いだろ!」
「あーはいはい分かったよ。つーかテメェが持ってるそれもいいんだけどな」
ふぅ、とバクラが熱く重い息を吐き出して見つめてくる。キツいけれど熱のせいで潤んだその目つき。一瞬情事の際のバクラを思い出して喉が鳴ってしまった。
「…寒ィからなんとかしてくんねえ?」
「え、あ、…え!?なんとかって、言われても」
「電気毛布……」
「…どこにあるか分からない」
「布団…はそういやクリーニングに出したままで取りに行ってねえな……」
「うう……」
家のことは大体二人任せにしているマリク。今ほど自分の頼りなさを恨んだことは無かった。
「何かボクでも出来ることってないかなぁ…」
肩を落として考えてみるもこれといって良案は浮かんでこない。情けなさに凹んでいると、ごそ、と生地が擦れる音がした。
「………布団に入って直にオレ様をあっためてくれるとかどうよ?」
見ればバクラがニィッと笑いながら布団の端を捲っていた。
突如出された提案。ボクが?誰を?バクラを?暖める?…抱き締めるってことか?
「…そんなことでいいのか?」
「は?お、オイッ」
ベッドに乗り上げたマリクは捲り上げられた所からバクラの布団の中に潜り込んだ。
何故か唖然としているバクラ。寝たままもぞもぞと近付いたマリクは眉を寄せてバクラへと腕を伸ばした。
「ん、こんな感じか?そっち、腕上げてくれないと抱き締められないだろ……って何だよバクラ?」
「………いや、お前ホント可愛いっつーか馬鹿っつーか…」
「は!?お前が言ったんだろ!なんだよその言い草はっ」
「あー悪ぃ悪ぃ。あったけェぜマリク。ありがとな」
「……ん」
バクラの腕が身体を抱き締めてくる。いつもより弱いその力に、胸を締め付けられるような気持ちになりながらマリクは優しくバクラの背中を撫でさする。
風呂上りで着替えていた厚い生地のスウェットから伝わってくる体温は自分のものより遥かに熱い。
そうだよなぁ、ボクも高熱を出したときは無性に切なくなって人肌恋しくなったことがあるもん……バクラも同じような気持ちになるんだな。なんていうか、可愛いかも…。
きゅうっと抱き締めながらそんな事を思っていると、肩口に顔を埋めていたバクラの息が肌にかかる。熱さを含んだそれに、マリクの褐色の肌が震えた。

「あっ、オイ…バクラ…んっ」
「なんだよマリク」
「息っあ…熱いっ…」
「…仕方無ぇだろ、熱上がってんだから」
「んんっあっでもっ…!」
ハァ、ハァ、とバクラが呼吸するたびに熱い呼気が肌に当たり反応してしまう。特に何も意識などしていないのに、なんだかマリクは膝を擦り合わせたくなった。
「じゃあなんだ…吸ったほうがいいか?」
「えっあ!?あッあ…!あぁッ…!!」
びくびくびくびくぅッッ!!!
皮膚に鼻を押し当てたバクラに思い切り嗅がれ、マリクの全身は細かい電流が走ったかのように震え上がった。
肌の奥深く、体の細胞まで吸い込まれているような錯覚に陥ってしまう。ぐりぐりと押し付けられる鼻も熱く、陸に上がった魚のように大袈裟なまでに肌が跳ねてしまう。
「ハァ…やっぱ堪んねえなこのニオイ…」
「ああっや、あ、あ、やだっ…バクラぁっ…!!」
「ン…」
「んうっ、んっんっふあっやぁッ…!!」
熱い吸い込みに次第に感じてきてしまい口が上手く閉じられない。
このままだと、もっと先までいってしまいたくなる。身体がバクラを求めてどうしようもなくなってしまう。

「駄目だバクラっ…こんなことしてたらっ、あッ、体に響くだろっ…!」
「だったらマリク、オレ様の為にもっと体にイイコトしてくれるか…?」
「あうっう、んッ…何…っ」
「…キス、だ」
肩口から離れていったバクラに至近距離で見つめられ、震えていた唇をつうっと親指の腹でなぞられる。高鳴る胸を押さえつけるマリクは奥歯をカタカタと鳴らしながら唾を呑み込んだ。
「だからっだめ、だってッ…キスなんてしたら余計ッ…あっ…」
再度唇をなぞられ、口の端まで触れたかと思うと下唇をやんわり摘まれて胸が爆発しそうなほど音を立てる。
「余計、なんだ…?」
「あっあ、んっ」
「なァ知ってるかマリク。人間の体ってのは面白いモンでな…健康な人間の体液を経口摂取、つまり誰かの唾液や汗なんかを口から体内に吸収すると相手の免疫力を取り込んで回復していくんだぜ…?」
「しっ…あ、知らないっ…じゃあキスすればっいいんだなっ…?」
少し常識知らずの気があるマリクは興奮を高められ頭が回らないせいもあってバクラの言葉をすんなりと信じてしまった。
力が上手く入らなくなった手でなんとかバクラの背中を掴み、顔の角度を変えて自らの唇をバクラのそれに合わせる。ちゅ、ちゅ、と重ね合わせたのは数回で、すぐに熱くぬめったものが上下の唇を割って入り込んできた。
「んんむッ、んふっ…んーーッ……!!」
「ふっ…んン…!」
(あっ熱いッバクラの舌っ…!!)
にちゅ、ぬちゅっ…くちゅちゅ、ぬるっ、ぷちゅ
咥内で蠢く肉舌のあまりの熱さはマリクを驚かせるほどだった。舌先で舌の表面を舐められ、舌裏をつつかれ、同じ舌先を絡めとられる。
「ふぅうっうっんんむッんにゅっんぷッ」

上顎、歯列も舐め尽くされる。
バクラから送られてくる唾液も酷い熱さで。しかし先程のバクラの言葉を思い出したマリクは自らも舌を伸ばし、唾液を送ろうとバクラの咥内に侵入させた。
(うあ…中も凄い熱いッ……)
触れているこっちの舌がどうにかなってしまいそうだ、とマリクは舌先から感じる熱さを堪えながらくちゅりと唾液を送り込む。
バクラの体を少しでも回復させるため、そう言い聞かせているのに身体にはいつものバクラとの行為が染み付いていて少しでも快感を得ようとしてしまう。マリクは顔を真っ赤に染め、いつの間にかちゅくちゅくとバクラの唇に吸い付いていた。
「んんっ…ぷはッはあッ…はぁっ…」
「ぷあッあっはあぁっ…」
「マリクお前…口ン中…甘ぇ…」
「はぁっ…ああ…うん……買ってきてくれたケーキ…食べたから…あっあふっ」
口を開け息をしていたらぴちゃりと舌を絡められた。舌を出し合って、水音を立てて互いの肉舌を舐め合う。
「ん…フ……喰ったのかよ…酷ェ有様だったろーが…」
「あ…んん……美味しかった…ありがとな…んぷ…」
「ククッ……誕生日だったなマリク…オメデトさん……ん」
「ふ…んぁ……ありがと…」
「……ま、テメェが一つ歳とってもオレ様からしちゃガキに変わりねえけどな…ところでマリク、オレ様も喰いてェんだけどよ」
「あぅ…む…ケーキをか…?」

ちるちると二枚の舌を絡ませ合いながらマリクが呟くと軽く笑ったバクラが舌を引っ込め、頬を撫でてきた。
「ケーキっつうか……そうだな、スポンジはキツイからクリームだけ舐めてェな。少しでいいぜ」
「分かった、持ってくるから。スプーンでいいだろ…ッあ…!!?」
突然胸から走った刺激に腰が跳ねる。目の前のバクラが、シャツの上から両乳首を摘んできたのだ。
「…いや、乳首につけてくれよ」
「ばッ…!?馬鹿なこと言うなよっそんなこと出来るわけっあっあぁんッッ!!」
「思い込みだぜマリク……テメェの乳首についたクリームを舐めりゃ治る、そうオレ様が思い込めば体調悪ィのなんてすぐ治るぜ」
「あっあっんんッ…!べっ別に指とかでもっいいだろっ…はぅぅ…!!」
「なァ……ダメかマリク……?」
くにゅくにゅっこりっ
先端から与えられる微弱な快感。柔らかかった乳首はすぐに硬くなってしまった。
シャツの上から摘まれ爪先で引っかかられるだけということに、もどかしくなってくる。
直に触られたいッ…舐められたいッ……吸われたいッ…!!
「っ…分かったからっ…!でもっお前を治すためだけだからなっ!それだけなんだからなっ!?」
「…ああ、分かってるぜ?」
ニヤリと笑ってくるバクラ。快感に歪んだ顔を唇を噛んで隠しながらマリクは布団からのそりと出て部屋を出た。

明るい廊下に出て、シャツの上からでもはっきりと乳首が勃ち上がっているのが見えて頭を振りながらダイニングへと戻る。
テーブルに置きっぱなしにしていた皿。そこに残った生クリーム。
「う…うぅ…」
プチプチと快感の余韻で震える手で一つずつボタンを外していく。曝される肌、そして、尖った二つの乳首。
手を伸ばして、指先でふんわりとした真っ白なクリームを掬い取って胸まで持ってくる。
…恥ずかしい、どうしようもなく恥ずかしい。
でも自分の為にケーキを買いに行ってくれてこんな目にあってしまったバクラが望むなら……とマリクは覚悟を決めて指先に乗った生クリームを甘勃起した乳首にそっと擦り付けた。
「はぅぅ…ンッ…」
両方の乳首に塗り終えて指に残ったクリームを舐め取ったマリクは顔を下げた。
茶褐色の胸の中心の二箇所にねっとりとした白色の場違いな存在感。今見下ろしているのは見慣れた自分の胸の筈なのに、異様な厭らしさにぞくりと背を震わせたマリクはシャツに袖を通したままバクラが待つ部屋へと再び戻った。


「ッ……ッ…クッ……!…っああ…戻ったか…」
「バクラ…大丈夫か?」
バクラの苦しそうな声に恐る恐る近付くと、布団の下の方がもぞりと動く。
「…あァ、大したこと無ェ。いいからコッチ来いよ。早く舐めてぇ…」
低く掠れたバクラの声に下腹部がずくんと重くなる。
シャツと布団にクリームが付かないよう注意しながら潜り込んだマリクは、睫を震わせながら息を呑んだ。
「スゲ……テメェの肌に映えててエロいぜマリク…」
「ばッ…舐めるなら早くしろっ…!」
「そう焦んなって……ン」
「ひうッ…!!あっ…ンァあ…ッ!!」
伸びてきた舌先に生クリームにまみれた乳首を舐め上げられ、甘く切ない快感が脳まで届く。バクラの舌はやはり熱く、ぴちゃぴちゃと水音を立てながら素早く上下に動かされ、喉の奥から甘い吐息が漏れるのが止まらない。
「あうぅっ、やっそんな舐め方やらしいッふぅっ…だめだっあっアアッ…!!」
「はぁっ…こっちも…だな…」
「んうぅぅううううう〜〜〜っ!!」
舐め上げる音に時折混ざる熱く興奮したバクラの呼吸音。
互いに横向きで向かい合って寝ている姿勢でマリクは恥ずかしさのあまり顔を覆い隠したかったのだが、布団がずれてバクラが寒くなってはいけないと身体の上に乗った布団を支えておく為に手が塞がっていて、目を瞑ってひたすら耐えるしかなかった。
胸元から聞こえる音は必死に舌で水を飲む犬のようだった。

「やぁあっああああっはうぅ…んぅう…っ!!」
「目…開けろよマリクッ…んむ、んぐ」
「!!!?ひゃっ、あッあああああああ……ッ!!!」
ぢぅううううううっちゅっぢゅむッぢゅうううう
いけないと思いつつも心の奥で求めていた快楽を与えられ盛大に腰が跳ねてしまった。
「ひゃめっだめっあっあっあァアあああああっっっ!!」
バクラの激しい乳首への吸い付きに閉じられない口から涎が零れる。ちゅくっちゅっちゅっちゅううっ、という音が鼓膜を犯す。
もう無理だ、とマリクは胸元で乳首にしゃぶりついているバクラの頭をきゅううっと抱き締めた。
「ああっあぅうっバクラっ乳首っちくび気持ちいいっ、はうぅっんっん〜〜〜〜ッ!!!!」
マリクの言葉に応えたバクラが更に強く吸い上げてくる。乳輪ごと吸いながら勃起した乳首をちろちろと舐められ、全身を震わせるマリクの頭は興奮と甘すぎる快感に爆発しそうになっていた。
空いているもう片方の乳首はバクラの指先で引っかかれ摘まみ上げられ捏ね繰り回されていたのだが、そちらにも熱い快楽が欲しくて懇願してしまう。
「こっちっバクラッ…あうっ…こっちも吸ってッ…!!」
「ハァッハア……ヒャハッ…わぁってるっつーの、ン」
「あぅぅぅううううッ!!やっあっイ、あぁあ〜〜〜ッッ…!!!」
「ハァ…はあ…ん…甘ェ……ンむ、ふ」
「んんん〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」

ぢゅるぢゅると熱烈に吸い上げられるもう片方の乳首。望んでいた快楽に身体がビクつくのが止まらない。
マリクは気付いていないが、抱いたバクラの頭を自分の胸にぎゅっと押し付けていた。無意識に、もっと、と強請っているのだ。
「ふぅっあうぅっんんンッッんー…っっ!!」
「ンんぐ、ん」
「あああっやっバクラぁっ!取れちゃうっそんなに吸ったら乳首取れちゃ、あっあはぁっあううっくぅっんんんンン!!」
容赦ない乳首の吸い上げにマリクは涙と涎を垂れ流しながら喘ぐ。痛い、けれど、気持ち良すぎる。身体が火照る。もっと、もっと先の行為までしたくなってくる。
随分前からマリクのズボンの中のペニスは張り詰めて汁を零していた。思い切り扱いてしまいたいのだが我慢して膝を擦り合わせていると、何か硬いものが足に当たった。
同じモノを持っているマリクにはそれが何なのか見なくても分かってしまう。
興奮しガチガチに勃起した、バクラのペニスだ。

「あっんんっなッいつの間にペニス出してたんだよッ…?!!」
「んむ、ぷはっ……ァア…?さっきテメェが部屋から出てった時な…チンポ勃ちまくってて我慢出来なかったんだよ……ククッ…」
「バクラっばかっやめっ」
ズボン越しの太腿に血液が集まり隆起したペニスをぐいぐいと擦り付けられ、マリクの腰が疼く。
だとすると生クリームを乳首に塗って部屋に戻ってきた時にバクラが苦しそうに声を詰まらせていたのは、布団の中で取り出したペニスを扱いてオナニーしていたのか。
そんなことをしていたなんて、とバクラの自慰を想像してズボンの中のペニスがびくびくと反応する。
「手、貸しな…」
「なっなにっ……アっ熱っ…!!」
手を取られ布団の中に引き込まれる。導かれた先にあったソレを握り込まされ、その熱さと硬さと太さにマリクは狼狽えた。
びくんびくんと脈打っていて、指でなぞれば分かるほど血管が浮いた怒張したバクラの雄の象徴。先端は大量のカウパーでぬるついている。
気付けばマリクの手は勝手に上下しバクラの熱り立った性器を先走りを手に絡めぐち ゅぐちゅと扱いていた。
「はぁっはあぁッバクラっ……!あっああっ!?やっんんっ…!」
「くっあ……あ…マリク…ッ!」
動きにくい体勢のままバクラに器用にズボンのチャックを下ろされボクサーパンツと共にズボンをずらされ、飛び出したペニスをすぐさまぐちぐちと扱かれる。
「なあマリクっ…ハァ…もうここまでキちまったんだ…どうせなら最後までヤっちまおうぜェ…」
「んんっんっそんなのっだめだっあああっんふッ悪化するだろっあっンッ!」
「くッぁ、激しく動きゃ…っ…適度に汗かいて熱も下がんだろ……!」
「ふぅうッう、あっんんっ…!!」
「……それに」
「はう、ぅぁあああ………っ!!!」

じゅる、と耳介に舌を差し込まれマリクはガタガタと身体を打ち震わせた。
「マリク……テメェだってケツん中にオレ様のチンポ欲しくて我慢出来ねェんだろ……?」
「あッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ………!!!!!」
囁かれた低い声。自分を求める、興奮して掠れたバクラの声。
昨晩もこれでもかと言わんばかりにペニスでハメられ胎内を犯され中出しされたので、きっと慣らさなくてもまだ多少は解れているだろう。
「〜〜〜〜っでも、ボクが動く、からッ…貴様は動くなっ……」
勃起したペニスから手を放しバクラから少し離れたマリクは、中途半端に脱げていた自分のズボンと下着を性急に足から抜き取りベッドの外に放り捨てた。
横向きのバクラを仰向けに寝かせ、尻にバクラの怒張がくるよう跨った。熱塊をそっと支え、ぬめる亀頭をアナルに擦り付ける。
「…いいのかよマリク。これじゃあオレ様の方が祝ってもらってるみてェじゃねえか」
「ッ……いいからお前は寝てろっ…これは治療なんだからっ…あっ…ぁああッッッ…!!」

くち、と狭い腸内にめり込んでくるバクラの肉棒。息を吐きながら力を抜き、マリクはゆっくりと自身の肉壷の中に招き入れていく。焦ってしまえば自分は勿論のこと、体力を落としているバクラもアナルの締め付けでいつも以上に痛みを感じてしまうだろう。
漸く根元まで加えきったマリクはバクラの上下する胸元にくたりと倒れ込む。太すぎるペニスの肉茎に後孔の皺はピンと伸びきっていた。
「オイ…辛かったら代わるぜ…?」
「ふうぅっ…!いい…いいからぁっ………あ…ァアッ…!!」
「うっ…クッ…!」
太く長い肉塊の胎内への圧迫の波を堪えきったマリクは上体を持ち上げてゆるりと腰を動かした。裂けるような痛みは無いがやはり十分に慣らした時のようなゆとりが無くて、カチカチと歯を震わせながら慎重に上下させる。
「あっ…ふあッ…!」
火傷してしまいそうな位に熱いバクラのペニス。
張った亀頭で最奥を突けば内腿が跳ね、引き抜こうと腰を上げると腸壁がペニスにぎゅうっと絡みついているのがマリクには分かって、自身の恥淫さに涙が頬を伝う。
結合部からにちにちにちと細かい水音が上がるようになった頃には、マリクは自らの淫らさなど忘れて甘ったるい嬌声を上げながら腰を振っていた。
「ひぃッあはァッ、あっああっあっバクラぁっ…!!」
「ッ…ッイイぜェマリクッ…ハァッ…くっ…!!」
バクラの太腿の横を挟むようにしてベッドに手をついたマリクは腰を突き出すような格好で血が通った剛直を出し入れする。ベッドは音を立てて軋み、その淫らな上下運動の動きに合わせてマリクの勃起したペニスもぶるぶると震え、鈴口から透明の蜜を垂らしていた。

「なァマリクっ気付いてるかっ…?テメェさっきからっ同じトコばっか…擦ってんのをよォ…クククッ…ヒャハハハァッ………!」
「うっあっああっああんッ…!!だってバクらのっバクラのチンポ擦れて気持ちっ…イイからぁッッ!あふっふぅうっんあっあっあっああんっ!!!」
極太の性器が内壁に擦れるのがあまりにも気持ち良くて腰が止まらない。
ただ、いつもバクラが抉り犯しすぐにイってしまう最も快楽を感じる部分が探し出せずにいた。
結局イくことができないまま、マリクはまたもバクラの胸板に倒れ込んだ。
「あっ…はぁあ…バクラぁ……」
「ハァ…ヤベ、すげーイイぜ……」
「ん……ちょっと待って…またすぐ動くから……わっ、ちょッ」
ハァア…と熱い溜め息を吐きながら言うと、背中を抱き締められぐるんと視界が反転した。
見上げると、興奮しきった表情でゼェゼェと息を吐くバクラが自分を見下ろしていた。

「ハァ…ハァッ……マリクッ…」
廊下から入り込んでくる光だけでもよく分かる程、発情し昂ぶっているバクラ。
熱のせいもあるのか、いつも以上に喰いかかってこようとする雄のフェロモンが体から溢れていて、ペニスを呑み込んだままのアナルが切なく締まった。
思い切り、それこそ喰い尽くすようにペニスで突きまくられたい。容赦なく腰を打ち付けられたい、と身体がマリクに訴えてくる。
でもそれじゃあバクラの体に負担が掛かる…そんなのは駄目だ…!と心で身体を抑え付けた。
「バッあぁっバクラ駄目だっボクが動くって言ってッ」
「…ハア……はぁ…もう我慢出来ねェんだよクソッ…!!」
「あッッッ!!!?くうッんあああああああっっ!!!!」

ずるるっ……ずぶんっ!!
埋まっていたペニスを抜ける直前まで引き抜かれ、一気に根元まで叩きつけられてマリクはぐんと背を反らす。
そのまま手加減無く何度も何度も獰猛なペニスを打ち付けられた。
ばづっばちゅっぐぢゅっぐちゅっ!
パシッパシッパンパンパンパンッ!!
「あっあああっすごっあぁアッ!んっあっあっあっばくっバクラァッ!!」
「ハァッハッハァッハァッ…!マリク…マリクッ…!」
直腸はもうとろとろに解れていて抜き差しの度に卑猥な粘着音が上がる。
唾液まみれのマリクの口からもひっきりなしに甘く濡れた喘ぎ声が漏れ、音の無い部屋に響いた。
「アアアッ!!バクラそこヤだぁっ!あっあっあっチンポだめっそんなに突いたらッアッアッあぁぁあああっ!!!」
自分では探し出せなかった一番感じる部分。バクラが攻めに入ってからすぐにその場所を亀頭で擦り上げられ、マリクは全身に汗を浮かばせながら途方も無い快楽に絶叫する。
「ふっ…はぁっ…ヒャハッ…ここがっイイんだろーがっ…!!おらっオラァッ!」
「うああっそこっあっあんっそこっもっとゴリゴリッて…!ああああんっ!イイッバクラのチンポ気持ちいよおっ!!あうっあああんっ!!!ふうっふううっ!!」
マリクはその美顔をぐしゃぐしゃに崩して泣き悶える。ペニスを一突きされる毎に意識が飛んでしまいそうで、袖を通したままのシャツごと腕を噛んでなんとか耐えようとした。
けれど噛んでいた腕はバクラにすぐに外されベッドに縫い付けられてしまった。
見下ろすその瞳は獣そのもので。鋭く熱い眼差しに捕らえられたマリクは、陰嚢で貯えていた精液が迫り上がってくるのを感じた。

「マリクッ…マリク…好きだっ…マリクッ…!」
「バクラッばくらぁっ!あっあっあんっあんっあんっ!!」
バクラの腰の動きも激しさを増してきた。ラストスパートがかかる。
ズパンッズパンッズパンッ!どちゅっどちゅんっ!!
「いっイくっもう無理っイっちゃうっバクラァッイっちゃうからぁっ!ああんっふぁああっ!!!」
「ハアッあァッ…クソッ…!オレ様も…もうッ……!!っぐ、う、うっ――――ッッッ!!!!」
「ひああああっ!あっ!あっ!イくッイクっバクッ……!っぁぁああああああああ〜〜〜〜〜ッッ!!!!!」

ビュグルルルルッ!!ビュゥウッどぷっビュプッどぷっどぷっどぷっ……
びゅぐっびぅううっびゅるっびゅぐクッ!ぴゅくっぴゅるっ


最奥に打ち付けられた凶暴なペニスから熱い迸りを大量に噴射されたのを感じながら、マリクも先端から勢いよく精を放った。




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「ん………ァ?」
重い瞼をゆっくりと開ける。
見慣れた天井。熱はまだありそうだが体は随分軽くなっている。隣ではマリクがすぅすぅと寝息を立てていた。
マリクとセックスをし終えてからの記憶がバクラにはなかった。
そっと手を布団の中に入れ自身の下半身を確認すると、ずらしていた筈のスウェットは腰まで上がっていた。マリクも薄いシャツのボタンを上まで留めている。
あれだけ汗をかいた筈なのに肌に不快感は無い。
ということは、絶頂を迎えて眠ってしまった自分の服をマリクが整え汗を拭いてくれたのだろうか。

「………ありがとな」
静かに眠るマリクの額に、バクラはそっと口付ける。
「ハッピーバースディ。明日起きたらちゃんと祝ってやるからなマリク…愛してるぜ」

幸せそうな寝顔のマリクを優しく抱き締め、再びバクラも眠りについた。








〜〜〜一方その頃〜〜〜

「クソッ昼間のあのガキっ!!弱っちそうなクセしてなンだったんだアイツは……!!!はぁあ〜〜〜それにしても…ついに見つけたマリク様…!前に街で見かけた時にいつマリク様に出会ってもいいよう持ち歩いていた小型盗聴器をマリク様に貼り付けたのは良かったんだが……あの店のケーキが食べたいっていう情報を得られたのはいいが、その後すぐに見つかったみたいで壊されちまったんだよなァ………あーあの夕飯食いながらぽつりと呟いた時のマリク様の声…堪んねェよなァほんとあの人………オレがグールズに入ったのもいつもヘソ出しワキ出しのどエロイあの人に操られたかったからなんだよなァ〜……ヘッ懐かしいぜ…うっ…マリク様の事考えてたらチンコ勃ってきやがった………アーーーークソッマリク様の艶肌にオレのザーメンぶちまけて軽蔑の目で見下ろされてェェェエエエっ!!踏みなじられてェエエエエエッ!!!!オレのチンコ踏んでくれマリク様ぁああああっっ!!…うっ(ドピュ)………はぁ、マリク様…貴方がいつかグールズ総帥の座に戻ってきてくれるのをいつまでもシコりながら待ってるぜ…!!!!!」




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2014.12.23 誕生日おめでとうマリク!