エンゼルフィッシュ
お風呂上がり。
ミネラルウォーターを飲むために冷蔵庫を開けようとしたら、わたしと入れ替わりでお風呂に入るバクラに少し大きな箱を渡された。
「なにこれ?」
「開けてみな。テメェに似合うと思うぜ」
そう言って、片手をひらひら振りながらバクラはリビングから出て行った。
「?なんだろ」
喉が渇いてたから一旦テーブルの上に箱を置いてペットボトルの水をグラスに注いで口をつける。
飲みながら、渡されたその箱を改めて見てわたしは思わず水を噴き出しそうになって慌てて口元を押さえた。
…ええぇ!だ、だってこれってッ
箱に印刷されてたのは、テレビや雑誌でよく見かける有名ブランドのロゴ。
宝石から服まで取り扱ってるけどとにかく全て一桁違うものばっかりだから驚くのも当たり前だった。
誕生日とか記念日とかなんでもない夜なのに…ちょっと申し訳なく思う。
…で、でもあれかな…こういうの、なんだかちゃんと付き合ってるっていうか、金額や物がどうこうじゃないんだけど、す…好きでいてくれてるんだなって感じられて、…やっぱり嬉しいかも…
とりあえず一応、ありがとうと心の中で頭を下げて箱に手をかけた。
なんだろう、大きさからして服かな…
「…っ?!!」
ドキドキしていた気持ちが一転、怒りがふつふつと沸いてきてあの男に叩き返してやろうかと思った。
箱の中にあったのは丁寧に畳まれた銀の光沢を放つ服。
じゃなくて、下着。ベビードール。
肩紐に手をかけて持ち上げると、畳んでたから分からなかったけど透けてる素材で、シースルーっていうの?裾はフレアスカートになってて、光が当たると見る角度で色が変わる生地で。
「……」
箱の中にはまだ何かあった。どうやって着けるのってツッコんでやりたい紐みたいなブラと、隠す部分の見当たらないパンティー。
呆れて声も出なかった。
え…ホント何これ…こんなエッチな下着を着ろってこと?
やだ、いやだ。本気で嫌だ。
今までコスプレとか、ろ、ローター使われたりとかっ恥ずかしい格好でえっちしたこともあるけどここまでエッチな下着なんて…!!
わたしが風呂上がり
こんな下着を渡された
バクラが風呂に入る
→この下着を着てベッドで待っておけ
ってこと?
「ぁっ…?!」
絶対にいやだと思った。
なのに、わたしの思いとは反してアソコが濡れだしていることに気付いて声を上げてしまう。
なんで………ッ!!?
「っん、」
困惑してる最中も身体の中からはお構いないしと言う感じで愛液が溢れてくる。
わ、わたしもしかして自分がこれ着てバクラとセックスするのを想像して感じてるの…?!
どうしよう、バクラももう上がってくるだろうし、やだ、やだ、やだぁっ…!
でも昨日は学校帰りに寄り道たくさんしてすごく疲れててセックス、しなかったから、余計期待してしまう。
奥まで突かれて、いっぱい甘えられて、おっぱいを吸われたいって思ってしまう。
「……」
今夜一回きり。そう心に決めてわたしは下着と一緒に寝室へ向かった。
キィ、と扉が開いてリビングの明るい光が寝室の闇の中に差す。
バスタオルを身体に巻きつけベッドに腰を掛けていたマリクは眉を寄せた。
「眩しいんだけど…」
「お前なら喜んで着てくれると思ってたぜ?」
不機嫌な声のマリク。扉を閉めたバクラは腰にタオルを巻いた姿で、部屋の照明を最も絞った明るさでつけてからマリクに近付いた。
「ちょっちょっと待って!」
「なモン待てるかよ、ぐあっ」
早速バスタオルに手をかけようとするバクラを突き飛ばしてベッドから飛び退いたマリク。
胸を思いきり突かれたバクラは、半ば本気で孕ませてやろうかと思ったが、ぼやけたオレンジの灯りの下でバスタオルに手をかけ恥ずかしそうに立っているマリクを見ると、下半身にぞくんと血が集まり言葉が出てこなかった。
「今、バスタオル取る、から」
俯いたマリクは消え入りそうな声で、胸元で留めていたバスタオルに手をかけた。
露わになった、淫らな下着に包まれた、淫らな肉体。
紐、とマリクが言ったブラは、乳首どころか乳輪すらも隠していない。まるで簡易の亀甲縛りのようだった。
薄いベビードールの乳首部分にはツンと勃ち上がったものが見える。
恥ずかしい突起物は薄暗い部屋でも確認できた。
これには、得意のサディスティックな言葉も出なかった。
全身を舐め回すように見つめるバクラの腰に巻いたタオルは持ち上がり、興奮が見て取れる。
飛び退いたと言ってもベッドから二、三歩の位置に立っていたマリクの目の前に立ち、バクラはそっとおとがいを掴んだ。
「バクラ…ん」
数秒見つめ合ったのち、どちらからともなく唇を触れ合わせた。しばらく小鳥の戯れのような啄む口付けが続く。
両手で握っていたバスタオルを床に落とし、マリクは緩やかな動作で手を伸ばしバクラの首に絡ませた。
バクラも、マリクのやわらかな身体を引き寄せ抱き締める。
胸板で潰れる、ふくよかな二つの肉。
下腹部に押し付けられる、硬く熱い肉。
たった一日交わらなかっただけで、バクラとマリクは久しぶりのセックスのように激しく互いの唇を貪り合った。
「んっんちゅ、あふ…あぁん、バクっ」
「はぁっ、ん、マリク」
タオルとベビードール越しなのに腹に当たる興奮したペニスの熱量が凄まじく感じられ、バクラにくたりと凭れ掛かるように抱き付いたマリク。
そんな、恋人の可愛い動作にバクラは嬉しくなり、一旦唇を離してマリクの手を引きベッドへともつれ込んだ。
「ふ、んっスゲェ、エロ…」
「あっんふっバクラだって勃ってるっんあぅ」
横這いで背後から胸を揉まれながら、マリクは顔だけ後ろへ向けバクラと濡れた舌を絡ませる。
尻に当たる肉棒の存在に胸がドクドクと高鳴ってしまい、膣からは愛液が滴り続けていた。
下着としての意味を成さない観音開きのパンティーのせいで、溢れ出る愛液が褐色の太腿を濡らす。
胸を揉んでいた手を外しマリクの股間に手を差し込んだバクラは、しっとりとやわらかい恥毛をくるくると指を絡めた。
「はぁん、えっ、ち、んぅぅ」
「ハァ、舐めさせろ、よ、テメェのマン汁」
「!!?やっやぁああ…」
興奮したバクラにごろんと仰向けにされるマリク。
言葉では嫌がっている、が、艶めかしい脚は勝手に開き、バクラに舐められることを望んでいるようだった。
鼻を近づけると香ってくる牝の甘酸っぱい匂いに、バクラは堪らずむしゃぶりついた。
じゅずうぅぅぅうッ!じゅっじゅっじゅぷッ
ズルッぢゅくんっ!!
「〜〜ッ?!あぁあアアアーっ!!!」
淫唇に合わせ唇を付けて凄烈に吸い上げる。
下の朱唇からとめどなく湧き出る透明のジュースはバクラの喉を潤し、口の端から洩れ出た淫液がマリクの隠れたアナルに伝う。
バクラは肉付きのいい褐色の太腿を指が食い込むほどしっかりと掴み、源泉をずるずると夢中で吸い続けた。
肥大したクリトリスに時折歯を立てれば、陸に打ち上げられた魚のように跳ね上がるマリクの腰。
「んひッひィイいッ!やだやだッやぁああん!!そんなっ吸われたらっきゃはぁん!!」
「はアっは、ぁっ、ウメェぜ、マリ、ク?んむっう、ふ」
「イィッ、い!いひゃっひゃああんッッ!………あっ…はっ…」
ぴちゃりと肉芽をひと舐めして離れたバクラの舌とヴァギナを繋ぐねっとりとした糸。軽くイったマリクは脚を投げ出して胸を弾ませていた。
気だるく体を移動させマリクに覆い被さったバクラは、左右に広がった乳房を両手で寄せ、薄い銀の生地の上から親指と人差し指の二指で乳首を摘み上げた。
こりこりにしこった乳首は甘い刺激に更に肥大し、マリクは切なく鳴いた。
「あっあぁんバクラ…」
「マリク…」
引き伸ばし弾かれれば敏感になっている先端から伝わってくる甘やかな痛みに眉を寄せ、指の間でくりくりと転がされれば眉尻を下げて息を詰めた。
次第にいつもと違う、一枚隔てた向こう側からの愛撫にマリクは物足りなくなってくる。
高級なだけあってとても薄い生地だったが、それでも直に触れられ乳頭に吸い付かれたいと思った。
マリクはごくりと唾をのんで、乳房を好き勝手に弄ぶ白い手を外し仰向けのままぎこちなくベビードールを脱いだ。
水中で陽光を反射する光沢魚のような下着の下から現れた、褐色の豊満な裸体。
恥ずかしそうにツンと上を向いた乳首にバクラは本能を抑えきれずに吸い付き、観音開きの下着によって丸出し状態のヴァギナに指を突っ込んだ。
「あっんん…!ぁ…」
愛撫でもなんでもない、赤子のようにただひたすら乳頭を吸われ、気付けばマリクはバクラの頭を優しく抱き締めていた。
しかし膣内を攻め立てる指の動きは獣と化した男のもので、マリクは今自分が母親と恋人の二つの立場にいるような、不思議な気分になっていた。
「バクラ、ん、おっぱい…おいし…?」
「…あぁ…」
「アッ掻き回しちゃだめぇっ…!」
ちゅう、ちゅっちゅっちゅっちゅっ
じゅぽじゅぽじゅぽっ
ぬぐっヌブッぐぢゃッぐぢゅぢゅっ!
乳首を吸いながら押し入れられた指で膣内をほじくられてしまう。
胸に顔を埋めるバクラの頭を抱く腕に力が入り、白銀の髪をぐしゃぐしゃに掻き乱した。
「あっだ、め、え」
「何がダメ、だ、早く入れられてェんだろ、がよっ、ハぁ」
「ふあぁあん…」
膣内でふやける寸前まで温まった指をゆっくりと引き抜いたバクラは、腰に巻いていたタオルを解いた。
腹に沿うほど反り返り、裏側の血管は強く脈打つ、太く硬いペニス。
我慢汁でぬらぬらと輝く亀頭をヴァギナに擦り付けると、可憐な花びらから涎が零れた。
粘っこい水音が静かな夜の部屋、二人の耳に入ってくる。
「ば、ばくらぁ」
マリクは自ら陰部を押し付けるという痴態を曝してしまう。
「ハァ、ねだってみろ、よ」
「やっ、いやぁあ…」
「おねだり」を要求してくるバクラ。恥ずかしさのあまり両腕で顔を覆うマリクだったが、程良く脂肪のついた腰は早く早くとだらしなく淫靡に動いていた。
バクラは、カウパーを零す性器を早く肉壷に押し込んで力強く注挿したい、甘ったるく必死に自分だけを求める嬌声を聞きたいと思ったが、恋人の小さな口から淫語を発してもらいたくて、今にもはじけ飛びそうなペニスを根元から握る。
限界に先に音を上げたのはマリクだった。
「いっ入れて、よ」
「…それじゃドコにナニ入れていいのか分かんねぇだろーが。しっかり言えよ、エロ乳牝犬マリク…」
「ば、ばかっ」
日常生活でこんなことを言われれば怒る以外ないのだが、バクラの放った愛欲のこもった辱めの言葉は発情したマリクの心をくすぐって悦ばすものでしかなかった。
早く、早く膣の最奥を激しいストロークで突かれまくりたい、と身体中の熱が唇を動かす。
「…あ、アソコにバクラの、ちっ…ちんちん欲しいの…」
「ッは…、オレ様のチンポが欲しい、のか?」
「…ッ!…うん……ちんちん、ちょうだい…?」
「っく、」
甘えた声にバクラは我慢することが出来ず、手で支えていたペニスをにゅぶりと熱い蜜壷に突っ込んだ。
間髪入れず、盛りのついた獣のように腰を打ち付ける。
「ぐう、あっ、く、はっ…溶けすぎなんだよッテメェの中っ」
「あっ!ああんっバ、ばくっらっアンッあんっはうぅっ!」
ビートを刻むように一定の速さで子宮を突き上げる。
待ちわびた恋人の肉棒の存在に、マリクの膣はぐにゅぐにゅとうねりペニスに絡み付いた。
ぱぢゅっパシンッパシンッパシッ
「あっあー、あー…」
「ま、りく」
「くひゃうっ」
ぬるり、とゆっくり腰を引く。
カリを膣口に引っ掛け、くんっと腰をずらすと泡立った白い液を纏ったペニスがぶるんっと飛び出てきた。
「や、やぁあバクらぁ」
「んな顔、すんな……すぐ入れてやる、から、よお…」
膣内のあまりの心地よさに数分と持たずして射精してしまいそうだと感じたバクラは、一度呼吸を整えてから再び怒張を突き入れた。
「ハァッはあっア、く、マリクッはぁっマリ、クッ」
「うあう、んひッ、ばくらっばくらぁキスっあぁんっきすっ」
「キスしたい、よおっ」
「っあ、マリッ、くちっ開けろっ、んっンンッふ」
「んにゅッんあむっ、んッんふぅ…あぷ…」
涙を流しながらキスを乞われ、バクラの心臓はマリクに突き入れているペニスのように膨れ上がった。
倒れ込むようにして顔を近付け、バクラは本能のまま濡れた朱の唇に噛みついた。
「んんん、ん」
ぐちゅ、れろ、と唇が、舌が、唾液が、絡まる。
腰を止めキスをしている最中も甘く締め付けてくる膣内に、まるで心の芯まで抱き締められているように思えた。同時に、あぁ、やっぱコイツのことすげェ好きだ、と改めて思ったバクラは自然と口元が緩んだ。
それに気付いたマリクが唾液で濡れたバクラの唇に、ちゅ、ちゅ、と数度吸い付いて手を伸ばし背に回してきた。
「なに、かんがえてた、の…?」
「さぁなァ。分かんだろ?」
「……ばか」
「ばか」
「わたしだって」
「マリク?」
「バクラがわたしに愛してるって言うみたいにわたしだってバクラのこと」
「あいしてるんだから」
「だいすきなんだ、から」
ツンと鼻の奥が痛むのが分かった。
やわらかい身体で包み込まれて。熱い膣で包み込まれて。他の誰にでもない、自分だけに向けられた言葉で包み込まれて。
マリクの汗ばんだ膝裏を掴んだバクラはがむしゃらに腰を打ち付けた。
「ああっ!んッんッあっ、んっやっあんっあんっあぁンッ!!」
「ま、リクッまりくっぐぁっア、はあっマリクッ!!!」
「あうっうああっ!きもち、きもちいっキモチいっああんッやぁあんっ!そこ、だ、め、ばくらぁ!ばくらアアッ!」
「クッ…すきだ、好きだ、あぁっハァッくそッマリクっ……あ、ぐぅっ…!」
膣壁がツタのようにバクラのペニスに絡み付いて全てを搾り取ろうとしてくる。
膝裏を掴んでいた手を離して背を丸め、シーツを必死に握っていたマリクの手を剥がして恋人つなぎにした。
首筋に噛みついて胸を握りつぶし腰を上から打ち付ける。
もう、体全体がペニスのように張り詰めていて、全身でマリクを攻め立てたかった。
ぼちゅっぐぷっじゅぽっじゅぽっじゅぼっじゅぼっ
「はあっはあっや、べ、マリ、ク、そろそろっ…」
「あんっばくらぁああ…ッ」
バクラの掠れた限界の声にマリクはたまらない色気を感じ、快感とは別に身体を震わせた。
「ひぃ…ッいこ…?一緒にきもちよく、なろ…?」
「り、く…ッ!うあっが、あァッ」
「あっあはぁっあうぅんッふ、ア、んはあああ〜ッ!!」
「ぐっ、」
絶頂にぎゅう、ぎゅう、と締まる膣。
ギリギリまで射精を粘ったバクラは急いで引き抜き、茶褐色の臍の穴に精液を飛ばした。
「…は……は…はあッ……」
「はーっ…はーっ…バクぅ、ら…あは…」
絶頂を迎え二人してベッドに沈み込んだ。
互いに唾液は止めどなく出てくるのに喉の奥が渇いて仕方無くて、ぐったりしながら相手の唇に吸い付いた。
「んふ、ちゅ、あふっぁあん」
「はっ…ンんっ」
「悦かった、ろ?」
汗で濡れたハニーブロンドの髪を撫で瞼へとキスをする。
一瞬きょとんとしたマリクは、ふふっと笑いお返しと言わんばかりにバクラの瞼に唇を触れさせた。
「ん、分かるでしょ…?」
「ははっ、まァなあ」
またキスをして、柔らかい身体を自身の胸に抱いた。
「でも」
「あ?」
「こんなエッチな下着、もう二度と着ないから。変態変態変態っ」
「なッ?はぁあ?!そりゃねェだろマリ、」
マリク、と呼ぼうとしたところで胸に額を擦り付けられた。
疲れて眠りにいざなわれたのか、その表情はうとうとしている。
「嘘だよバクラ。また今度、しよ」
「……ククッ、最高だぜぇマリク」
後々この時の発言を後悔することとなるマリクなのだが、恋人とのセックスで満たされた今はとにかく眠たくて、バクラへと身を寄せ深い眠りについたのだった。