渡したくなるオトコノコ
「んんふ、ンッ、むぐ、んちゅ、あむ、ふっ」
「ン、ん」
舌を根元近くまで舐められて舌先を熱烈に吸われて身体中が快感に痺れ上がる。
括れた褐色の美麗な体躯を強く抱き締められ、高熱を出した際肌に触れられるとビリビリと痛むような感覚に、マリクは堪らずバクラのシャツを掴んだ。
「ンンんんっ、んむ、んふぅっ…んーーっ…!」
歯列をなぞられ、唾液まみれの熱い舌に上顎を押すように舐められる。マリクの痩躯はその都度跳ねてしまい、密着したまま握っているバクラの制服のシャツには深い皺が幾つも寄っていた。
けれどマリクは柔らかい唇が重なる快感、熱を持った舌が絡まる快感、そして服を着たままではあるが互いの身体が密着している快感に夢中でそんなことを気にしている暇は無かった。
「んんーっんんぅ!…っんんむッんぐ、ふぅっ、ぷはぁっあッ、んにゅ、はむっ」
「はぁっハ、ん…あっ、ふ、ハァッ、ん、ん」
口腔を蹂躙しまくっていた舌が抜け出ていくが休憩する間も無く下唇を食まれ、そして吸われる。
激しすぎる吸引。くらくらする頭。
柔らかかった乳首は触れられたわけでも無いのに服の中でピンと勃ち上がり、同じく手付かずの股間にも血が集まって半勃起状態になっている。
唇が完全に離れる頃にはマリクの脳内は真っ赤に染まり上がり、小生意気な幼さの残る美顔は蕩けきっていた。
「はぁっはあぁっあ、アッ、はふ…ばっバクラっな、なん、で、あっン」
何故、とマリクは至近距離のバクラに訊ねるも頬に口端に眉間に瞼にと唇で触れられて、微弱な快感に口が上手く開けない。
何故こんな唐突に濃厚なキスをしてきたのか、マリクは知りたかった。
「ァあ…?ンなもんテメェで考えな。んっん」
「あむっんくッ、ふぅっ、ん、ぷ」
また唇を割って潜り込んできた肉舌に犯されてしまう。侵入者の再来に、口内は拒むどころか甘く熱い唾液をどっと零れさせて歓喜しているようだった。
二月十四日の今日、いつものように学校から帰ってきた獏良…ではなく意識が交代していたのでバクラだったのだが、その手にはずっしりと重そうな紙袋が下げられていた。それは何なのかと訊ねる前にうんざり顔のバクラが、「女の人気が半端無ェぜ、オレの宿主サマは」と言ってきたのですぐにその中身が何なのか、疎いマリクでも分かった。
ここ最近テレビ番組で散々流れていた、そう、バレンタインのチョコレートだ。
獏良が周囲の同年代の男より遥かにモテているのはマリクも気付いていた。一緒に街を歩いたり買い物をしていると大抵の女性は獏良に向けてちらちらと視線を送っている。
きっとこのチョコの数は学校一なのだろう。
制服を脱いだバクラがダイニングテーブルの椅子に座るもどうしてだかニヤニヤとこちらを見てくるので訝しめば、どうやらその大量のチョコの半数はたまに現れるクールで目つきの悪い獏良に惚れた女子が手渡したものだということだった。
「まァオレ様のことだけどな」
そう言ったバクラはまたニンマリと笑って見てきた。
ムッとしたが、ここで何か文句を言えばこの男の思う壺だと思い冷静になるマリク。そして自室に行き、紙袋を持ってリビングに戻ってきてバクラの前にドンと置いたのだ。
「別に羨ましくない。ボクも何人かの女から貰ったからな」
そう、それからいきなり抱き寄せられて唇を塞がれてしまったのだ。
今日は朝から天気が良く家ですることもなかったので一人街中をふらふらと歩いていたのだが、どういうわけだか見ず知らずの女性数人から可愛らしい包み紙や紙袋を渡された。
不思議に思いながらもデパートに立ち寄り、衣料品の階で気になるショップを一通り見終えたので地下に下りてみれば、これまたどういうわけだか何店かのチョコレート専門店から売り物と思わしき箱を渡された。
帰り道、当然マリクは彼女達の行動の意味を考える。バレンタインだということは知っていた。でもなぜ見ず知らずの自分に突然?
(……は!そうか、きっと一人で歩いてるボクが可哀相に見えたからだ)
マリクは自分が出した答えに少々ショックを受けた。しかしこれならば納得出来る。でなければ通りすがっただけの、しかも初めて会う自分にチョコを渡してくる筈が無いだろう。
同情されて渡されただなんてバクラに知られればからかわれるのは目に見えてるので、帰ったら自室にそっと隠してバクラがいない時に少しずつ食べて行こうと思ったマリクだった。
「んにゅっんぷっはふっあむッんんんっ、ちゅ、は、あっあっうっんっ」
破るような勢いで服を脱がされローションで手短に慣らされたマリクの後孔にはみっちりと肉棒が埋め込まれていた。椅子からソファへと移動して、正上位でバクラが腰を突き落とす度に結合部からにゅぶにゅぶと淫猥な音が鳴り、ディープキスをしている唇がずれてしまう。
言わなくてもお気付きだろうがマリクの導き出した答えは当然お門違いである。
街中で渡してきた女性達は本命や上司にあげる予定だったものをマリクを一目見て急遽変更して、専門店の店員は目の前を横切るマリクを見て慌てて店頭の品を渡していた。
外人で美形でモデル顔負けのプロポーション。バクラ(獏良)に負けず劣らずのモテっぷりなのだがマリクはそのことに気付いていなかった。
マリクに嫉妬させたかった筈なのに自分が嫉妬していることに苛立つバクラは、温かく締め付けてくるマリクの内部を怒張したペニスでぐちゅぐちゅと攻め立てる。
嫉妬させて、逃げようとするマリクを掴まえて、マリクの為にと作った特製のチョコを一粒半ば強引に唇に押し込んで、そのまま甘ったるいキスをしてからかいつつもイチャつこうと思っていたのに。
(このクソガキっ、なにどこの女とも知れねェ奴らから受け取ってやがる!)
柳腰を引き寄せマリクと舌を絡ませながらバクラは眉を寄せる。
まさか今日マリクが外出するとは思っていなかった。一緒に外を歩けば大抵の女がうっとりした目でマリクを追うくらいだ、…それに明らかに下心のありそうな男も。
浮かれに浮かれきって、今日という日でなくても行動力のある女達がバレンタイン当日にマリクに出会ってしまえば、そりゃ渡してしまいたくもなるだろう。
マリクにはそれだけの魅力がある。でなければ、盗賊王であり大邪神でもある自分が嫉妬にまみれながらアナルセックスなどするものか。
「はあッはぁっハッ…ぐっ…っ…!」
「あっあっうぅっ!あっやだっそこっやめッ激しッ…うっうっうっうんんッ!」
ぐぶっにゅぶっぶぷっじゅぷっぶじゅっ
もっと、もっとと言わんばかりにペニスを絞り上げてくる腸液とローションでとろとろに解れた肉襞。
額から垂れてくる汗。マリクの熱い呼気と甘い嬌声。絡まる互いの発情した視線。離れればすぐに吸い付きたくなる唇。
精子を一滴も残らず最奥に叩きつけてお前には自分だけだと知らしめてやろうと、バクラは陰嚢から込み上げてくる射精感をもう少しだけ堪えながら腰を動かした。