消える心3






「あッああっ!バクラっ」
じゅうっじゅるじゅる!ぷちゅ、ずるっズズズズッ



バクラを呼ぶ甘ったるい喘ぎ声は歓喜に満ちていた。
しこった乳首は軽く噛むと程よい弾力があり吸うとどこか甘い味がしてバクラは我を忘れて小さな突起を犯した。
猛攻によって胸から生まれる快楽にマリクは背を丸めてバクラを抱き締めながらくはくはと喘ぐ。
コリコリとした硬さと味を堪能している中、もう片方の乳首にふと目をやると切なげに勃起し主張していた。
鼻息を荒くして攻撃の対象を変更し、唾液でコーティングされた今まで吸い上げていた乳首は二本の指で抓り上げた。
「もっと…あふぅう…そんなッ吸ったらっああッッち、くびっ取れちゃうっ…でもキモチい、よぉっ……!!」
涙混じりのマリクの声にバクラの股間がズキズキと痛む。
いい加減窮屈だった前を寛げようとベルトに手をかける。
けれど膨らんだ乳首をしゃぶったままだとどうにも上手く外せられなくて、ぢゅうッとひと吸いして口を離した。

「ハァッハァッ、クソっ、たれ」
ガチャガチャと荒い音を立てベルトを抜き取りジッパーを下ろしてトランクスごとジーンズを下げると、ブルンッとバネのように飛び出してきたペニス。
鈴口には透明の我慢汁が浮かび上がっていた。
上を向く己の欲の塊に手をかけ扱きながらお預けを食らった犬の表情をしていたマリクに見せつける。
「テメェのせいでっこんなになっちまった」
見ればマリクのペニスも震え先端から粘液をだらしなく垂らしていた。
バクラは自分の猛ったモノを上下に擦って、鈴口をマリクの先端に押し付けた。
張り詰めた二本のペニスが濡れた音を立ててぷちゅぷちゅとキスをする。



「ああ、あ、あああ、バクラの」
恍惚の笑みを浮かべてマリクは互いの性器が触れ合うことへの悦びを露わにしていた。
唇だけでなく顎まで涎でぬるりと光らせアメジスト色の瞳に情欲を灯し熱い涙を浮かべるマリクを見て、強引に組み伏せて思い切り犯したい衝動に駆られる。
湧き上がってくる恐ろしいまでの黒い欲望を、バクラは必死に抑え込んでマリクの手を取った。
扱くのをやめてマリクと自分の勃起した肉棒を上に向かせ纏めて掴み、反対側から同じようにマリクの手に握らせた。

「ひ、ぃいっあつ、あついっはう」
「オイ…ケツ、指突っ込んでてやるから…ハァ、」
興奮に言葉が続かない。大きく喉を鳴らしマリクの首筋に鼻を埋めて、ゼェ、と息を吐いた。
「お前はっチンポ…思い切り扱いとけ、いいな?」
「うんっうんっ分かった…ぅ、あ〜〜…っ」
いきり勃ったペニスから手を離すともう片方のマリクの手がすぐに二人のモノに触れ、両手で優しく包まれる。
首の薄い皮膚の向こう側から際限なく立ち昇ってくる芳醇な体臭を嗅いだまま指をアナルに滑り込ませるとマリクは悲鳴を上げた。
指を鉤状にして入ってすぐの所の柔らかい壁をぐにぐにと刺激すれば淫らに尻が揺れた。

「早くやれっ、て」
「はああっうっうんっするからっちゃんとするからぁッあ、んん〜〜っ!あ、あ!!」
「っく、はぁっマリク…!」
普段と違う、倍の太さにぎこちなく扱き始めたマリク。
自分と同じく血管を浮かばせるまでに膨張した恋人の肉竿が密着し、その熱さと一緒に擦り上げられる刺激にバクラの声は上擦ってしまう。
思わず高い声が出てしまったが気にすることなどできないほど興奮していた。
「スゲ…いいぜマリク、っは、あ、やべェなコレ…あッ」
「あはっあっあっちんぽっ気持ちい、バクラっもっと指、ぐちゃぐちゃにッおねが、い」
「…ッ!チッ」
「あっいひぃいい!」

涙混じりの訴えをされバクラはまだあまり解していない穴にぶちゅりと指を二本追加した。
「あはあああぁあっぁ〜あっ〜ばく、らぁああ」
「く、ちっ開けろッ」
「あんっんぶっ」
きつく締まる腸内で指をバラバラに動かせば開けっ放しの口で喘ぐマリク。
堪らないいやらしさに歯がぶつかる勢いでキスをした。
「む、はっん」
「んん、んぁむっぷむ、くぅんん、んちゅっふあぁんぷっ」
「ンむッあ、ン……はあっ」
欲望のまま柔らかい唇を貪り犯す。口をレイプされながらもマリクは必死に手を動かしていた。



「どうするッ……一回出しとく、かっ…?」
アナルを解す手を止めることなく口端から流れ出る涎を舐め取りながら問うと、マリクは辛そうにバクラの舌を噛んできた。
「ん!あァッぅ、ん……!!」
小さく頷いて、褐色の手の中に収まりきらない二本のペニスを包み込んでぐちゃぐちゃと扱くマリク。
バクラは眉を寄せマリクの頭を引き寄せた。
ちゅ、ちゅ、と顔中にキスの豪雨を落とす。
マリクは緩く瞼を落として降り注がれる口付けにため息を漏らす。溢れ出る先走りによって濡れたバクラとマリクの性器はずっと音を立てていた。


ぐぢゃっぐぢゃっぐぢゃっぐぢゃっぐぢゃっ





「あ、あぁ、ひ、バ、ばくっあっや、イっイっイくっ……も、出る、う」
「く、あ…ッマリ、ク」
「ひ…あっあっバクラっバクラ、もっボクとっ……あ…ん〜〜……ッ!!!」

ごぷ
びゅるるっ
「………………くっ…!」


絶頂と同時にマリクにぎゅむッと強く握られ、バクラも堪えきれず膨れ上がったペニスを解放させた。




「ハァ…はっ…」
脱力感が体中を襲い、未だ握ってくるマリクの手から自分のものを抜いてバクラは尻をつき床に手をついた。
ぬらぬらと光る性器は硬度を失いだし、バクラは苦笑する。
そして今更だったが暖房がついていないことに気付いた。
このまま事に及んでもよかったがマリクが風邪をひいても困るので、つい先程まで暖めていた自室に移動しようと思い乱れた下半身を整える。
「なぁマリ、」
へたり込んで、手の中にたっぷりと吐き出された二人分の粘ついた精液を両手で零れないように持ち上げるマリク。
ゆっくりと顔に近付けていくマリクにバクラはまさか、と射精直後の気怠い体で止めようとした。




だが


「ハァ…ん……んむっ、んぐ……」

「………っ……」

喉を大きく鳴らして白濁を飲み干すさまに声を出すことも出来ず。




─────くれぐれも一度に全部飲ませないように



店から出る直前に言われた薄気味悪い店主の言葉を思い出す。

体温の上昇のために出た物とは別に噴き出してくる汗に、一気に頭が冷めた。
もしかすると自分はマリクにとんでもないことをしてしまったのではないか?



「ン……ん、凄い……喉が…粘着いてる…ボクと、バクラの」
「おい、マリク」
「精子混ざって…………ははっ、美味しい…ク、ハハハ、アハハハッあハハハハハハハハ」
「マリクッ!!!」



パンッ!

笑うマリクの声を遮るように、乾いた音が部屋に響いた。
みるみるうちに赤く変色していく頬を包み込んで、一切光を宿していない瞳を見つめる。


「マリク」

「な、んだよ…いきなり叩いてきて」


「マリク、オレが誰だか分かるか?」
「は…?どうしたんだ急に」
「いいから言え!!」


怪訝そうに窺ってくるマリクに、そんな顔をしたいのはこっちだ、とバクラは思う。
顔を固定されたまま、困惑した目を向けてマリクはゆっくりと口を開いた。



「…バクラはバクラだろ?三千年の時を経て甦った馬鹿で粗野で下品で変態な男だ」

「マリク」



いつものように真顔で小憎たらしい発言をするマリクに、バクラは胸を撫で下ろす。
しかし







「……でもそんなバクラを、ボクは誰よりも」












────────愛してるんだ────────────────









聖母のような微笑みを向けてくるマリクに、言葉を失ったバクラはただ彼を抱き締めることしか出来なかった。