大人のオママゴト



額に浮かんだ汗を拭いながらマリクはエレベーターから降りた。
今日は久しぶりに晴れたので朝からツーリングに出かけ、最近話題のご当地グルメを満喫してマンションに戻ってきたところだった。

「マリ君おかえりー。どうだった?」
「ただいま。もう最ッ高だったよ!久々に走れて気持ち良かっ……ん?」
玄関まで迎えに来てくれた了に、マリクはどれだけ楽しかったかを伝えようとした。…のだが、迎えに来たのは了だけではなかった。
了の背後、いや正しくは了の腰までの身長の少女が、了の片脚の裏側に抱き着いてこちらをチラチラと見ているのだ。

「…誰だこの子?」
少女と目が合うと、慌てて了の後ろに隠れられた。
靴を脱いでスリッパに足を入れたマリクは、鍵を置きながら了に訊ねた。
廊下を歩きながら、了が苦笑いする。
「仕方なくというか何というか…」
「仕方なく?」
「うん。マリ君が帰ってくる少し前にね、ポスト見に下まで降りていったらさ、この子のお母さんに頼まれちゃって」
リビングのドアを開け、了と了の脚に引っ付いた少女はソファへ。マリクは手を洗うために洗面所に行こうとしたのだが、了の言葉に驚いて手を洗うことを忘れそのままリビングに付いて行った。

「…それってもしかして結構面倒なヤツ?ご近所トラブルとかいう…!!警察沙汰になったりとか…!!そういうのテレビで見たことあるぞボク!」
「待ってまってマリ君?!お昼のテレビの見過ぎだからそれ!」
「え…違うのか?」
「違うよー!上の階の人なんだけど、どうしても一時間だけ面倒見てくれってお願いされてさ〜。旦那さんは仕事、頼もうと思ってたご両親は急に体調崩して、今日は休日でマンションの管理人さんもいないから、たまたまエントランスで会ったボクに頼んできて………」
「…なあ。充分面倒ごとな気がするんだけど」
「うん…そうかも……わー!どうしよー!」

頭を抱えて困惑する了。すると、マリクが帰ってきてから少女が初めて口を開いた。

「ねぇ。遊んで」
「え?」
「お兄ちゃん、わたしと遊んでくれなきゃイヤっ!おままごと!おままごとするのーーー!」
「ちょ、わ、助けてマリ君〜!」
「ええっ?!そんなこと言われても!」
先ほどまで黙って後ろにしがみついていた姿は何処へやら。手をギュッと引っ張って了を床に座らせた少女は、ぴょんぴょん跳ねながら了の背中に抱き着いてきた。
助けを求められたマリクだったが、小さい子どもと接する機会など今まで一度もなかったので、何をどう助ければいいのか分からず慌てふためくことしか出来なかった。

「わたしが奥さんでお兄ちゃんが旦那さんね!新婚の二人はとっても仲良しでらぶらぶなの!それでね、毎日旦那さんが家計のために残業いっぱいして帰って来たら、奥さんがぎゅーってして、そしたら旦那さんがチューってキスしてあげるの!ねっステキでしょ!」
「最近のちっちゃい子は家計とか残業とかそんなこと知ってるの?!マリくん!ボク子どもの相手したこと無いんだよ〜〜!!!」
「が、がんばれ了…!」
「そんなぁああああ!!」

自分に出来ることは何も無い。そう悟ったマリクは親指をグッと立て、台所で手を洗い始めた。

「お兄ちゃん。これなぁに?ネックレス?ピカピカですごくキレイ!」

シャラン、と金属が擦れる高い音。
首から下げていた千年リングの存在を少女に言われて思い出した了は、ハッとして背中に貼り付く少女へ振り向いてニッコリと微笑んだ。
「これはね。ボクの替わりに君と遊んでくれるオモチャだよ」
「なぁに?なんのことかぜんぜん分かんない」
「ふふっ…じゃああとは任せた!上手くやってねバイバーイ!!」
「きゃあっ?!」

キィイイン!と千年リングから高い音が鳴った。驚いた少女が両耳を塞いで目を固く瞑る。
だが、現在の状況に少女以上に驚いている存在がいた。
無理矢理身体の交替をさせられたバクラである。

「ふざけんじゃねェ宿主!!バイバーイ、じゃねーよ!!オイ!聞いてんのかテメェ!!!」
「お兄ちゃん?」
「バクラ?!なんでお前が出てきてるんだよ!」
「アァ?!誰がこの状況で出てきたがるか!宿主に無理矢理引っ張り出され…クソッ!扉に鍵掛けやがった!!!」

チッと舌打ちするバクラ。
それはそうだろう。この状況、と言ったので恐らく宿主獏良了の身体の斜め上辺りからこれまでの経緯をのんびりと、恐らくニヤニヤしながら俯瞰していただろうに、いきなり自分が了の立場になってしまったのだから。
そんな、こめかみに青筋を立てたバクラは背中の少女を引き剥がして立ち上がった。

「お兄ちゃんおままごと!」
「ァ゛あ゛?」
「ひゃうっ?!!!」

ドスの効いた声に、少女はビクンッと小さな体を震わせて怯えてしまう。
マリクは慌てて駆け寄り、小さな頭を撫でた。
「大丈夫、大丈夫だからな?…おいバクラ!こんな小さい子どもを怖がらせるなよ!」
「あー?こんな面倒臭ェこと引き受けた宿主が悪ィんだろうが。…いや、元はと言えばこのガキの母親が悪いんだよ。どうせ今頃不倫相手の男の所に行って股開いて腰振ってアンアン喘いでるんだろうぜ。邪魔なガキは同じマンションに住む高校生に押し付けてな。ヒャハハハハ!父親と母親、どっちについて行くか決めとけよ!!」
「おいバクラっ!!!」
「???」

バクラの残酷な言葉が聞こえないようにマリクは咄嗟に少女の耳を塞いだ。
実を言うと、平日、了が学校に行っている間に昼ドラやご近所トラブル再現VTRをよく見ているマリクも、バクラが言ったこととほぼ同じ事を思っていたのだ。
きっと、一時間どころか三時間経っても母親は迎えに来なくて、仕事から帰ってきたこの子の父親がその事実を知り妻の不倫が判明し、親権争い慰謝料請求etc...というドロッドロの修羅場になるんだろうな、と思っていた。思っていたが、言わなかっただけだ。

小さな耳からそっと手を離したマリクは、しゃがんでもう一度少女の頭を撫でた。

「気にするな。さっきのは何でもないから。ほら、お兄ちゃんとおままごとするんだろ?」
「うん!!」
「ハァ?!!!おいマリク!お前何勝手なこと言ってやがる!」
ダンッ!と大きな音を立ててフローリングを踏んで立ち上がったバクラが中指を立ててきそうな勢いで凄んできた。

「へーぇ?出来ないんだ?」
「ア゛ア゛?!!!出来ねえどうこうの話じゃねェだろうがッ!なんで!オレ様が!ンなガキのままごとに付き合わなきゃならねーんだよ!!!」
「お…お兄ちゃん急に恐くなったぁ…」
「よしよし。大丈夫だからな」

マリクは、フンと笑ってニヤニヤしながらバクラを見た。

「はーー。お前、子どもの相手すら出来ないんだ。なんだか失望したなあ。何でも出来る男だと思ってたのに」
「……は?」
「情けないよなあ。普段偉そうな態度ばっかりとってて「十六歳のガキのテメェの何倍も歳上のオレ様に出来ねェことも知らねェこともねえんだよ」って踏ん反り返って言ってたの、この前聞いたばっかりな気がするんだけど」
「……」
「口だけの男だったなんてなー。これから先一緒にいても、ままごとすら出来ない今日のお前の情けない姿が頭によぎっちゃうなー」
ここぞとばかりに煽るマリク。いつもしてやられてばかりなのでバクラへの仕返しのつもりだった。
特にベッドの中では好き放題にされているので、年下の自分に煽られてわなわなと震えるバクラの姿を目の前にしてマリクは愉快で仕方なかった。

「…やりゃいいんだろ」
「ん?なんだって?」
「だぁから!やればいいんだろっつったんだ!!!出来ねぇだとぉ…?このオレ様が…?馬鹿にしてんのかテメェ!!ままごとぐらいどうってこと無ぇよ!!」
「へー。ふーん?」
「信じてねぇな?!…いいぜ、目ン玉ひん剥いてよぉおおく見とけ。オレ様がガキ相手でも完璧なままごとをやってみせてやるからよぉ!!!」

くくくっ、とバクラに見えないようにマリクは笑った。相手が自分の思い通りになることが、ここまで気持ちいいものだったなんて。
これから起こる内容を後でバクラと交替した了に面白おかしく伝えてやろう、とウキウキしながらバクラを見た。

いきなり豹変した白銀長髪歳上男に怯えてへたり込んでいた少女の手を、バクラがぐいっと掴む。
「おらガキ。ままごとやるんだろーが。とっとと始めるぞ」
「ヤッ…いやっ!」
「あ?」

手を振り払われ、バクラは眉間にシワを寄せた。

「お兄ちゃんさっきから恐いもん!やだっ!やっ!そんな人とおままごとしたくないっ!」
「ププッ…くく…!」
「……おい、なに笑ってやがる」
「あっゴメン」
「わたし、こっちのお兄ちゃんとおままごとする。頭撫でてくれたもん」
「…え?ボク?!いやボクは遠慮しとくよ!」

いきなり自分のことを指名され、マリクは慌てて顔を横に振った。

「ねっ。やろっ。やろーよー茶色の外人のお兄ちゃん!」
「茶色の外人のお兄ちゃん…」
「…はぁぁあ…ったく」

面倒臭そうに頭を掻いたバクラが、大きな溜め息を一つついた後、すうっと息を吸い込んだ。そして、少女に向けてフッと微笑んだ。
そのバクラの柔らかい表情に、なぜかマリクは胸がざわついてしまった。

「…悪かったな。いいぜ、優しくしてやるよ。ほら、ままごと。するんだろ?」
「………うん。する」
差し伸べられた白い手。マリクにしがみついていた少女はおずおずと小さな手のひらを乗せた。
雰囲気と声色が優しくなったバクラに、少女は抱いていた緊張と警戒を緩め、こくりと頷いた。

「で?どこから始めるんだ」
「えっとね、さっきわたしが言った、旦那さんが会社から帰ってきたところから!」
「あー」
「だからお兄ちゃんは一回部屋から出て、ドアを開けて入ってきてね。ちゃんと残業で疲れた顔して帰って来なきゃダメだからね?!」
「分かった分かった。分かったからンな高い声でキャンキャン喚くな」

小さな頭を撫でたバクラが、仕方無ェな、とまた柔らかく笑ってリビングのドアを開けて廊下へ出て行った。
部屋から出て行く姿を見送りながら、マリクは唇を小さく尖らせた。
(…コイツ、ボク以外にもそんな顔できるんだ)
形容し難いモヤモヤした気持ちを抱くマリクを他所に、ままごとがスタートする。



「いいよお兄ちゃん!じゃなくて旦那さんね。帰ってきて〜!!」
「ハイハイ…」

ガチャ。
ノブが下がり、リビングのドアが開く。

「ただいま。今帰ったぜ」
ニッと笑って部屋に入って来たバクラは、面倒臭いというより一日働いて疲れたという表情で、どうやら本当に役になりきっているようだった。
「お帰りなさいあなたー!今日もおウチのローンの為にいっぱい働いてきてくれて、ご苦労さまです」

ぺこり、と少女がお辞儀する。
近頃の子どもはかなりリアルなこと言うなあ、とマリクはソファに腰掛けながら二人のやり取りを眺めた。

「ああ。繰り上げ返済して早い内に支払いから解放されたいからな。で、メシはもう出来てんのか?」
「あーなーた。違うでしょ!帰ってきたら、ほら。することあるでしょっ?おかえりの、ギュー!」

はい!と小さな両腕を目一杯左右に広げた少女。
キラキラと目を輝かせる彼女は、この後の夫…役のバクラの行動を期待してのものだろう。
少女の背の高さに合わせて両膝をついたバクラ。両腕を広げた少女に向かって、同じように手を広げた。

「そうだったな。ほら、こいよ」
「あ、う…うんっ…!」
歳上の美少年に微笑みかけられ、元気一杯だった少女は突然しおらしくなった。頬を紅潮させ、もじもじしながらバクラへと近付く。

「ぎゅってするんだろ?オレの首に手を回して…そう。そうだ」
「は、はい…」

細く短い手がしっかりとバクラの首に回る。
いつもは自分を抱き締めてくる白い両腕が、少女の細い腰に回った。

マリクは生唾を飲み込んだ。
なぜか、心が苦しくなった。

「ただいま」
「はぅ、う、おかえりなさい…あっ…あなた…」
「どうした?照れてるのかよ。帰ってきたら毎日やってることだろ?」
「あ、あぅ、はぅうう…!」

少女の小さな体をバクラは更に強く抱き締める。
バクラの顔は長い髪に隠れて見えなかったが、少女の横顔ははっきりと見えた。
真っ赤な顔で金魚のように口をぱくぱくとさせている。
…こうなるのも無理ないだろう。外見が良くて声も良い十以上歳上の異性に、優しく、痛くない程度に強く、抱き締められているのだから。
家族や同年代の少年とでは決して味わえない刺激だ。
同性の自分でさえ、バクラに優しく抱き締められた時はこの少女のように……

(…って!いやバクラお前っ、ここまでするのか?!)

煽ったのは自分だが、どうせバクラは嫌々適当に付き合ってあげるのだろうと思っていた。
なのにいま目にしているこの光景はどうだ。
隙間がないくらいしっかりと抱き合っている、この光景は。
まさかこのバクラという男がここまでするだなんて。

妙な苛立ちが止まらず貧乏ゆすりをしていたマリクは、了に抱き着いた時の少女の言葉を思い出してハッとする。

『奥さんがぎゅーってして、そしたら旦那さんがチューってキスしてあげるの!』

バクラは、完璧なままごとを見せてやる、と豪語した。
完璧。完璧…?
ということは次にするのは。

(…いや、まさか。さすがにそれはないよな。するはずないよな。だってボクが見てる、のに)

ままごとが始まるまでは、今日のことは笑いのネタになる!とニヤニヤしながら気楽に見ていた。しかしいまマリクの顔に張り付いているのは不安と焦り、そして不快感だ。
片手で口元を覆いながら気持ちを落ち着けようとしていると、少女を抱き締めているバクラが口を開いた。

「じゃあ次はオレの番だな」
「えっ」
「ただいまのキス。しねぇの?」
「しゅっ、するっ!しますっしたい、ですっ!」
「敬語はいらねえだろ。夫婦なんだからよ」

抱擁の腕を解き、小さな体を離したバクラが眉尻を下げて苦笑する。

そんな顔。…そんな顔、ボク以外にするなよ。ていうか、本当に、するのか、お前。だってボク、ここにいるんだぞ。傍で見てるんだぞ。
もう分かったから。お前が何でも出来るのは分かったから。子どもの遊び相手も出来ないのかって煽ったボクが悪かったから。
だから。

バクラの手が少女の頬を撫でると少女は直立不動になり、爆発寸前と言わんばかりに顔を真っ赤に染めた。
「目を開けられてるとできねェだろ?瞑りな」
「は、い」
「でもって顔を少し上に向けて。そう、いい子だ」
「ぁう……ん…!」

優しく甘いバクラの声。
少女は溶け落ちそうな表情のまま目を瞑り、バクラからのキスを待ち受ける。
頬に手を添えたままバクラの顔が少女の顔へと近付いて行く。

マリクは我慢できなくなって立ち上がった。
「バクラ!!ボクが悪かったからもうこれ以上やめてく、」



ピンポーン。ピンポーン。


「れ…」
「あ?」
「ぅ……?」


突如鳴った玄関のチャイム音。
三人の動きは、エコーがかかった音によって止められたのだった。




*******




「娘を預かって下さってありがとうございました!本当に、本当にすみませんでした…!!」
「ばかっママのばかぁっ!もうちょっとあとで来てくれたらよかったでしょっ!?ばかっバカっウヮァァアン!!あぁあああん!」
深々と頭を下げる少女の母親を、少女は大泣きしながらぽかぽかと叩き続ける。

チャイムを鳴らしたのは少女の母親だった。
モニターに映った母親の姿を見たバクラは少女とキスする前に立ち上がり、少女の手を引いて玄関へと向かって行った。
二人のキスを止めるためソファから腰を上げただけの中途半端な姿勢になっていたマリクも、二人の後についてきていた。

「いえ。ただ、次からはこういうことはちょっとお受けできませんので…今回限りということで…」
「はい…すみませんでした…」
「マーマーのーばーかーーー!!!うぁああん!!!もっと遅く迎えに来てよぉぉお〜〜!!!!!」

涙と鼻水まみれの顔で文句を言いながら脚に抱き着いてくる娘の頭を母親は撫でた。
「遅く迎えに来いって…何を言ってるのかしらこの子ったら」
「あぁ。一緒におままごとしてたんですけど、途中やめになっちゃったからだと思います」
「獏良さん、娘のままごとに付き合ってくださったんですか?!ああっもう、ほんとにすみません!大変ご迷惑おかけしました…!!あっ、あのこれ、お詫びといいますかお礼といいますか。つまらない物ですがどうぞお召し上がりください…」

少女の母親は持っていた紙袋をバクラに手渡した。
バクラの後ろにいたマリクの位置まで、甘い匂いがふわりと鼻腔を擽ってきた。

「シュークリームなんですけど。お嫌いじゃないといいのですが」
「大好きなんで嬉しいです、シュークリーム。この店、最近雑誌に載ってましたよね。確か、誕生日ケーキにどんなイラストでも描いてくれる、だったかな」
「まあ、よくご存知ですね!実は今日娘の誕生日で、この子の好きなキャラクターのイラストを描いてもらったケーキを頼んでいたんですけど。この子には夜まで内緒にしたかったので両親に見てもらうようお願いしてたのですが…本当に申し訳ありません」

再び母親が頭を下げる。
そういえば両親が急に体調崩したって言ってたな、と二人の会話を聞きながらマリクは思い出した。

「でも言っちゃっていいんですか?娘さんに内緒だったんじゃ」
「ええ。こんな状態なので聞こえてないと思います」
「ばかぁあ゛あ゛〜〜!あああーーーん!!」

バクラと母親が会話している最中、少女は母親の脚に顔を擦り付けながらずっと泣き続けていた。

「ほら。もう帰るわよ。獏良さんにお礼を言わなきゃね」
「ヒック、ひぐ、うう…やっ!!ヤダ!!わたしまだお兄ちゃんと一緒にいるーー!!ママだけ先に帰ってて!!」
「こら!ワガママ言わないの!」
「だってぇえ!!ママが早く来たからぁあ!ママが悪いんだもん〜〜!!!」

不満を爆発させながら号泣する少女。
…まさかコイツ、泣き止ませるためにもう少しだけ預かるとか言ったりしないよな…?
バクラの背中を見つめながら不安に思うマリク。
するとバクラは少女に近付いてしゃがみ込み、ぽん、と小さな頭に手を乗せた。

「泣くなって。可愛い顔が台無しだぜ?」
「ううーー…ぅぐっ…あう…おにい、ちゃん、だって、だってっ」
「今日誕生日なんだろ?だったら泣いてちゃだめじゃねェか。ママも困ってるだろ?」
「ひっく…ヒック…ぐすん……うん…分かったぁ…」

バクラに言われ、少女は大人しく泣き止んだ。

「すごいわ獏良さん……!ほら、ありがとうございます、でしょ?」
「お兄ちゃん、ありがとう、ございます」
「どういたしまして。あぁそうだ。そういや名前聞いてなかったな。なんて言うんだ?」
「えっと、…ーーです」
「そうか」

スン、と鼻をすすった少女がはにかみながらも自身の名前を声に出した。
後ろに立っているマリクからはバクラの表情が分からないが、きっとまた優しく微笑んでいるのだろう。
栗色のふわふわした髪の毛を、バクラはその白い手で数度撫でた。

「誕生日おめでとう、ーー。」
「〜〜〜うんっ…!!ありがとうお兄ちゃん!あはっ、えへへ」

バクラに名前を呼ばれた少女は一瞬目を見開いたあと、ふにゃあああっと顔を綻ばせながら礼を言った。よほど嬉しかったのか、スカートの裾を弄って小さな体をくねらせながら。

「良かったわね。さあ、帰りましょう。では獏良さん、失礼します。ありがとうございました」
「バイバイお兄ちゃん!またね〜!」
「ああ。じゃあな」

紅葉の手をぶんぶんと振って、少女は母親の手に引かれて獏良家をあとにした。





「っっっっだぁ〜〜〜〜ッ…!!!疲れたぜクソッッッ!」

玄関ドアを閉め帰って行った二人の話し声が聴こえなくなった途端、バクラは壁に凭れて大袈裟に溜息をついた。
握り拳をつくって肩をトントンと叩きながらマリクの方へと顔を向けてきた。
「ドロドロの面倒ごとじゃなかったな」
「え?」
「だぁから。不倫じゃなかったな、っつってんだよ」

バクラは受け取った紙袋を持ち上げた。小指で耳をほじりながらつまらなさそうに続ける。

「この店、ウチのマンションからだと車でちょうど往復一時間くらいだ。男と会ってどうこうしてる時間は無えな」
「…そうなのか」
「なんだ?予想が外れて不貞腐れてんのか。まァ確かにそのほうが面白かったけどな、オレ様も」
「…別に。不貞腐れてなんかないけど」
マリクは腕を組んで顔を背けた。

「ま、どうでもいいけどよ。と、こ、ろ、でェ〜〜〜……どーーーだったよ!オレ様の演技力は!!ガキ相手でも抜かりねェ完璧さだったろうが!!!」

威張りくさったその態度。カチンときたマリクは口を開いた。

「……フン。子どもの相手が出来たくらいで威張るなんて小さい奴。お前さ、疲れたなんて言ってるけどホントは内心残念がってるんじゃないか?だってお前みたいな男がままごととは言え少女とキスするチャンスだったのになあ。優しいフリしてたおかげであの子、お前に惚れてたみたいだし。可愛い顔が台無しだぜ?だってさ!ハッ。キザなヤツ!聞いてて鳥肌が立っちゃったよ。なんならもう少し預かってあげても良かったんじゃないか?ボクは外でブラついてるからさ、二人きりで過ごせばいいじゃん。あの子も喜ぶだろ。お前とキスが出来なくてあんなに泣きじゃくるくらいだからな」

バクラから顔を背けたままペラペラと喋り続ける。マリクは自分がおかしなことを言っていることに気付いていなかった。
これっぽっちも思っていないことが次から次へと口から飛び出てくるのが止められなかった。

「ハッ、あんなガキとキスとか。やってられるかよ」
「どうだか…って何するんだ。放せよ」
バクラと目を合わせたくなくて目を閉じたまま身を翻しリビングへと向かって廊下を進もうとしたのだが、腕を掴んできたバクラによって阻止されてしまった。

「何怒ってるんだよ」
「怒ってない。放せ」
「怒ってんじゃねえか」
「怒ってないってば!!」
「じゃあ妬いてんだな?」

マリクの身体がびくんと硬直する。
妬くとはつまり、嫉妬のことだ。
眉を寄せてマリクは吼えた。バクラの腕は簡単に振り払えた。
「はあ?!!妬くって、なんでボクがっ。そんなハズないだろ!馬鹿馬鹿しいっ!!」
「反応しすぎだぜ?」
「煩い!妬いてないって言ってるだろ!」

床を強く踏み鳴らしマリクはムキになって叫んだ。
帰ってきたら見知らぬ少女が家にいて、子どもを相手にすることから逃げた了に少女の生け贄としてバクラが差し出され、自分が煽ってしまったためバクラは少女とままごとをすることになって、役になりきったバクラは少女と強く抱き合って、役になりきったバクラが少女とキスをしようとしただけだ。
ただそれだけのことであって、自分が妬く道理などどこにもないのだ。
気持ちが落ち着かなかったり胸が痛かったりしたのは、何の意味もないのだ。

「内心残念だァ?ガキの子守にこんな菓子如きじゃ割に合わねェし、菓子もらって喜ぶのは宿主だけだろ。ああ、マンションの住人に愛想振りまいて宿主に恩を売っとくのも悪くはねェが、」
「んッ」

「テメェにそんな顔させちまうなら、それこそ割に合わねェからな」

突然壁に押し付けられてしまったマリク。
甘く低いバクラの声。マリクの好きな、声。
押し付ける力の強さとは正反対にその声は優しいものだったので、マリクは全身をぞくぞくと震わせた。
頬に触れてくる白い手。この手は、少女にも触れていた手だ。だがいま自分に触れてきているこの手はままごとをしていた時のそれとは違う。
強い欲を纏わせ熱を持ち、キスよりも先のことを求めている手だ。

「ば、かっ…離れろよッ」
「馬鹿はテメェだ」
「あぅ、むッ…んふ、ん…」

柔らかい唇を重ねられる。何度か食まれた後、滑った舌が滑り込んできた。
マリクの口内で二枚の舌がくちゅくちゅと絡み合う。唾液が溢れ、重なった二人の唇の僅かな隙間から水音が洩れた。

「んん、ふ、んぷ…んちゅ、あむ…」
「ン、フ……む、…はぁっ」
「んんんっ、んう、あうぅ……ぷはっ」

絡み合っていた舌が解け透明な唾液が互いの唇を濡らした。淫熱を滲ませた視線が、いまディープキスをしていたように熱く絡まる。
蕩けた表情になっていたマリクだったが、先程まで顔を背けていたことを思い出して慌てて俯いた。

「心配すんなって。テメェ以外とする気なんてねえからよ」
「…嘘つけ。あの子ともしようとしてたじゃないか」
「ァア?お前あの時、本気でオレがすると思ってたのか?」

答えられないでいると図星だと確信されたらしく、ハァ、とまた溜息をついたバクラがマリクの上下の唇に二本の指の腹をふにふにと押し当ててきた。

「のぼせたガキ相手なんざこれで充分だろ」
「貴様…こんなので子どもが騙されると思ってるのか…?」
「充分じゅーぶん。つーかこれでも勿体ないくらいだぜ。オレ様の身体は安くねぇんだよ」

じゃあボクに触れるのはいいのか、ボクとキスするのは問題ないのか、お前はボクなら、いいのか。
そんな言葉が頭をよぎったが言ってしまえば嫉妬していたのを認めたことになるような気がして、マリクは顔を赤くしてバクラを睨みつけた。

「さてと。それじゃあままごとの続きをするか」

ニィッと意味深に笑うバクラ。手は頬を撫で、腰を撫でてきている。
マリクは密かに感じつつもその笑みに恐怖を抱いた。

「続きって、なん、だよ」
「新婚って設定だぜ?抱き合って、キスして、そしたらその後することなんて決まってるだろ」

マリクは固唾を飲んでバクラの言葉の続きを待った。期待で心を高鳴らせながら。

「なあ、ヤろうぜマリク。夫のオレ様のチンポでテメェのナカがぐちゃぐちゃになるまで悦がらせてやるからよォ?」
「ひッ!…ぅ…ァあっ…!!」
「な、いいだろ。結婚してるんだから問題ねえよな……?」

強く抱き締められ、耳元で淫猥な言葉をエロチックな声で囁かれる。
陰部に、生地越しでもはっきりと分かるほど勃起したペニスを押し付けられながら。
マリクはまるであの時の、バクラに抱き締められて固まってしまった少女と同じような状態になっていた。
甘美な快感が身体中をじくじくと駆け巡る。あ、ア、とマリクは引き攣った喘ぎ声を小さく上げながら首を横に振った。

「ば、かっ…ボクたち、けっ結婚なんてしてないだろっ…そもそも男同士じゃないか…っ!」
「だからそういう設定だっつーの。ま、テメェとなら……まァいいか。今は」
「なにがッ…あっハ、ァ…〜〜〜!!!」

愛欲の込もった強い抱擁はそのまま、首筋に甘く噛み付かれた。褐色の淫靡な十六歳の身体がビクンと跳ねた。
熱い鼻息が肌をくすぐり、熱い肉舌が皮膚の上をねとねとと這ってくる。
崩れ落ちそうになるのを辛うじて堪えながら目の前の男の身体を力の入らない手で押し返そうとする。だが、抱き締めてくる力は強くなっていく一方だった。

「ハァ…しょっぺえ…」
「う、るさっ…!仕方ないだろっバイク乗ってたんだから…!」
「誰も文句なんか言ってねェだろうが。褒めてんだよ。ほら」
「あ、ああっ」

ぐ、ごりっ。
ほんの少し前に押し付けられた時より遥かに硬くなっているバクラの雄の象徴。全身に走るぴりぴりとした悦感が止まらない。

「テメェのエロい身体のニオイと汗のニオイが混ざって…スゲ……ハァ…ぁー…早くチンポぶち込みてぇ…」
「ば、か、ぁ…!」

敏感な首筋を舐めながら、吸いながら、甘噛みしながら、バクラが切羽詰まった声で囁いてくる。肉棒を何度も押し付けてきながら。
マリクのボトムスの中のペニスは既にしっかりと勃起していて、バクラに触られたいと泣き震えていた。
薄い唇がちゅっちゅっと首にキスマークを付けながら喉仏へと移動してきたので、マリクの頭は必然的に後ろに反る体勢になってしまう。
息も絶え絶えになんとか声を振り絞った。

「わ、かったから、ぁ」
「んー…?」

喉仏に吸い付き、熱い舌でぺちゃぺちゃと皮膚を舐めてくるバクラの返事は気怠げだった。

「せ、ックス…!する、から…!」
「…ハッ、やっとその気になったかよ」
「でもっここは、いや、だ…するならベッドとかで…」

玄関を入ってすぐの廊下で行為に及ぶことは、素面のマリクには無理だった。
ようやく抱擁の手が解け、バクラに手を引っ張られる。だが寝室には一瞥もくれず通り過ぎてしまう。

「さっきの場所じゃなけりゃいいんだろーが」
「ん、うん…まあ…」

ドアが開かれて二人してリビングに入る。マリクは後ろ手でドアを締めた。
ソファ、だよな、多分。と二人掛けのしっかりとしたソファに向かおうとすると腕を掴まれた。

「すぐ戻ってくるからここで脱いで待ってな」
「脱いで待ってなって…」
「なんだよ。脱がしてほしいのか?」
「ち、っがう!!ボクを待たせてどこに行くんだってことだ!」
「あーちょっとな。取ってくるモノがあるんだよ」
「え…。まさか貴様ッ何か変な道具使う気じゃ、あ、オイ待てっ!!」

ぱたんとドアが再び閉まる。伸ばした手は意味なく終わり、腕を下ろして項垂れた。
いやらしい玩具を使われるのか、とマリクはぼんやり考えた。
何も使用しなくてもあの男の巧さに狂わされてばかりだというのに、もし使われてしまったら自分はどうなってしまうのだろうか。

「変態っ…いやらしい奴…ッ」
呟きながらもマリクは服を脱いでいく。
バクラに従順なつもりはなかったが、追いかけて止めないのは身体の淫熱を上げられたからだ。それに、僅かな好奇心もあった。
あっという間にボクサーパンツ一枚だけの姿になり、引き締まった肉体が露わになる。
張りのある滑らかな若い肌。腰は女のようにくっきりと括れ見る者を怪しく惹きつける。
マリクの美貌はバクラとのセックスを重ねる毎に増しており、街を歩けば異性だけでなく同性の目も奪うほどだった。

下着にシミができているのが分かって一人赤面していると、ようやくバクラが戻ってきた。
「…遅い」
「悪ィな。どこにしまったか見つからなくてよ」

一体どんなモノを持ってきたのか気になって、マリクはバクラの手元にちらりと視線を向けた。イボまみれで極太のバイブや、丸い玉が連なったアナルビーズや、見たこともない怪しい器具を思い浮かべていたのだが、バクラが持っていた物は予想とは大きくかけ離れたものだった。

「…白い、布?」
「ん?ああ、お前が着るんだぜ。ほらよ」

持っていたソレを手渡され、今度はバクラが服を脱ぎはじめる。
綺麗に折りたたまれた白い生地。着るということはコスプレか…。ほんの少しだけ残念な思いを抱きながらも気になって広げてみたマリクだったが、生地のその正体に顔が引き攣ってしまった。

「おい…これ…」

頭が通る長さの紐の輪があってフリルで装飾され長い紐が二本ついた、布の面積が体より明らかに少ない、ソレは。

「新婚つったらやっぱ裸エプロンだろ」
「っば、馬鹿か貴様っ!!アホっ!変態っ!趣味が悪すぎる!!」

わなわなと震えながらマリクは叫んだ。
女子高生の制服を着させられたこともある。ナース服を着させられたこともある。だがこれは、今までの物より圧倒的に生地面積が少ないではないか。

「趣味が悪いは違うだろ。男のロマンだぜ?」
「だからっ!女と違って胸も尻もないボクが着たのを見たって残念でしかないだろ!」
「お前…ホンットーに自分の価値が分かってねェよな。見ろよコレ」
「え?……あッ」

上下の服を脱ぎ終えたトランクス姿のバクラ。コレ、と言われたが何のことだか理解できず、バクラと目を合わせたマリクはバクラの顔から視線を下げていき、その意味をようやく理解して顔が燃えるように熱くなった。

「テメェがこれ着たのを想像しただけで治まらねェんだぜ?」

生地を押し上げ今にも突き破ろうとしている、雄々しい肉棒。まだトランクスの中に納まっているが、どんな色をしていてどれだけの硬さでどれほどの熱さでどのようなニオイを纏っているか、もう数え切れないほどバクラと身体を重ねてきたマリクは見なくても分かっていた。そして、生地にはマリクと同じように濃いシミがつくられていた。
下腹部がじわりと疼く。後孔がきゅんと締まる。バクラに深いところまで力強く抱かれたい思いが、淫らな肉体を熱く焦がしていく。
マリクは無言でエプロンを頭から被って両腕をそれぞれ通した。

「後ろは貴様が結べよ…ッ」

マリクはゆっくりと後ろを向いた。ククッと笑ったバクラが、慣れた手つきでリボンで蝶々結びをつくる。
きっと上手く結んだんだろうな、と思うも、やはり確認したくて背面に手を伸ばそうとしたのだが、突如走った快感にマリクはびくついてしまった。
背に刻まれた碑文をバクラが舐めてきたからだ。

「は、アッ、やっあ」
「いつ見ても綺麗だよなあ。ココ」
「ん――……〜〜ッッッ!!!!」

欲望を宿した舌が、碑文が浮かび上がった皮膚を舐め、吸い上げていく。
墓守の儀によってマリクの背に深く彫り込まれたそれは既に役目を終え、現在は性感帯となりバクラとの行為を盛り上げるための部位になっていた。
掠れた声のバクラに褒められ、マリクはひくひくと感じ入りながらエプロンの裾を握った。

「立ったままは辛ェか?」
「う、ん…」

靄がかかった頭でこくりとマリクが頷くと、腰に手を回されバクラが場所を移動していく。
向かう先はソファだと思っていたのだがすぐに違うことに気付いた。ここは、キッチンだ。
ぼんやりしながらバクラを見つめると軽くキスをされ、ワークトップに立たされ両方の掌を台に置くよう促された。

「何か料理作ってるっつー設定で頼むぜ」

そういえばこれはままごとの続きだったことを思い出す。思い出した直後尻をぐにゅりと揉みしだかれ、マリクは甘い悲鳴を上げた。

「ああっ、ァあ、ん、ふ…!」
「なあ。何作ってくれてんの?」
「あ…えっ…?」
「夕飯。こっちは残業で腹減ってんだよ。もちろん精力つくモンだよな?」

ぐにゅっぐにゅう、むぎっもにゅっむぎゅうッ
いやらしい手つきで容赦なく尻肉をボクサーパンツ越しに揉んでくるバクラ。
寄せて、持ち上げられて、左右に開かれて、奥に身を潜めるアナルが蠢いてしまう。
マリクは意を決して言葉を発した。

「そ、う…だよっ…!ど、うせ一晩中ボクのこと抱くつもり、なんだろっ…んぅッ…!だか、らっ、あはァッ…は、う、ぅ、ちゃんと考えて作ってる、から、あっ…!!」
「へぇ…?一晩中ヤらせてくれんだ。そこまでのつもりはなかったんだけどなァ?」

フッと笑われ、しまった、とマリクは焦り赤面した。
一晩中だなんて、自分はなんてことを言ってしまったのだろうか。これではまるでバクラに一晩中抱かれることを望んでいるみたいではないか。
羞恥心が溢れ思わず泣きそうになってしまったが、それはバクラによって阻止された。
そのまま続けろ…とトーンを落とした声で囁かれ尻を揉んでいた両手がエプロンの隙間から潜り込んできて、マリクの乳首を摘んできたからだ。

「アッ!!ぁは、は…!あ、ん……ああ……!!!」
「でも本人からOKが出たなら有り難く朝まで抱かせてもらうぜ。なんせこっちは仕事中もお前を犯すことばかり考えてんだからな」

エプロンの下でぷっくりと膨らんでいた乳首をくりくりと捏ねながらバクラが楽しそうに笑い、首に吸い付いてくる。
後ろから抱き付かれているせいで身体が密着し、柔らかい双丘の谷間に硬いペニスが埋まる。ギンギンに反り勃ちマリクを犯したくて堪らないとトランクスの中になんとか納まっている、硬いペニスが。
アナルは早く後ろの男のペニスを咥えたいとひくひく震えている。敏感な乳首は硬くしこり、もっと強く愛撫して欲しいとピンと勃起している。
快楽の涎がだらしなく開いた口から垂れそうになるのを堪えながらマリクは熱く息を吐いた。
「ま、じめに仕事しろ、ばかバク、らっ…!!ていうか、ンっ、包丁使ってて危ないから…そんなに触るな…!あ…ッ!!」

バクラのフォローによっていかがわしい大人のままごとが続行となり、マリクも役になりきって、包丁など持っていないのに使っている最中ということにして行為を進めた。

「ヒャハハ!いいじゃねェか。ほら、テメェだってこんな場所でこんなことして、いつもより感じてんだろ?」
「ひっ!う、ぁ…はぁ…ア、やっあ……や、だぁ…!」
「嫌じゃねえだろうが…こんなに乳首勃たせやがって…」
「いっ!!!ひゃう、ふ…ンンっ……!!!」

いやらしく勃ち上がっていた乳頭を指先で何度も素早く弾かれ、マリクは甘すぎる刺激にぶるっと全身を震わせた。
更にバクラの手はマリクの胸全体を揉みながら勃起乳首を扱き、押し潰し、引き伸ばし、爪で引っ掻き、胸への猛攻撃でマリクを感じさせてくる。

「あー…あー…ッッ…!!い、ィ、はうぅ、んーーーっあああーーーー…!!!」
「好き放題エロ声上げやがって…こっちは腹減って堪んねえッつーのに…!」
「えっ!ば、ばく、待てっ、あ、や、ァアアアアアアア―――――……〜〜〜ッッッ!!!!!」

ぢゅうっと首を一吸いして身体を離したバクラがエプロンの中から手を引き抜き、包丁で何かを切る動作をしていたマリクの手と肩を掴んできた。 ぐいっと手を引かれ肩を押されマリクの身体が反転し、ワークトップに背を向けバクラと向かい合う。
額に汗を滲ませ興奮を隠そうともしない、雄の表情。お前を犯し潰してやると言わんばかりの強いオーラを纏っている、整ったバクラの雄の表情。 胸をドキッとさせる暇もなくエプロンに手をかけられ、片側の胸が露わになるように生地を引っ張られた。
そして、止める暇もなく乳首に吸い付かれた。

ちゅうっじゅじゅっじゅくっちゅくっじゅるっじゅるるるるッ

「ばっアッ!や!!!あはっあぐぅっはふ、ひ、い、んんんんんん〜〜〜〜っ!!!!!!」

甘く尖っていた胸の先端の突起が淫らな水音を立てながらしゃぶられる。マリクは艶めかしい歓喜の悲鳴を上げた。

「あふ、んっんっんふぅ…はあ、ん…あ…ァアッ……はあ…い、い…!」

バクラに乳首を弄られるのが好きなマリクは下腹部を戦慄かせながら快楽に浸っていた。十六歳にして開発されきったマリクの乳首は、開発した張本人に吸われることに悦びを露わにしている。これ以上ないくらいに勃起し、吸い付いてくるバクラを楽しませていた。
乳輪ごとびちゃびちゃと荒く舐められ膨らんだ乳首を甘噛みされる。時折赤子のようにちゅうちゅうと吸ってきたりと、マリクは次々襲いかかってくる異なる快感に脳幹が痺れるような思いでバクラの頭を抱き締めた。

「はあ、はあ…あークソ……美味ェ…」
「ばくっアァッ吸いながら喋るな…っ!!」
「やっぱ飯よりもマリク…テメェを喰い尽くしてぇよ」
「アアアッ!ひ、いっ!!はあっんっふうっあぁっあぁっ……!」

甘く吸われたかと思えば次の瞬間には強く吸い上げられる。緩急をつけた胸への愛撫に色っぽい吐息が漏れるのが止まらない。
腰がびくんと跳ね、マリクの目尻から熱い涙が零れ落ちた。
ぬるついた舌でコロコロと転がされ胸から広がる快楽の波を堪えていると、乳首に吸い付いたままのバクラが手を伸ばし、マリクの唇を割って指先が口内に滑り込んできた。
バクラの行動の意味が分かったマリクは大人しく侵入者の指に舌を絡めた。

「ふぅう…あぷ…んう……」

舌をつついて感じさせてくる指をマリクはうっとりした表情で丹念に舐め、唾液を絡ませていく。
いつも口内で絡み合う舌の柔らかさとは違う、中をゆるゆると掻き回してくる指の硬さにマリクは夢中になってしゃぶりついていた。
しばらくして引き抜かれたバクラの白い指。根元から爪の先までマリクの透明な唾液でたっぷりと濡れている。バクラの唇はいつの間にかもう片方の乳首を吸い転がしていた。
ハァハァと呼吸するマリクは次にどうされるか分かって両脚を軽く開き尻の力を抜いた。下着をずらされ、自分の唾液を纏ったバクラの指がアナルに触れてくる。

「ふ…アッ…やるならちゃんとっしろっ…!!」
乾いたソコを指の腹でぴたぴたとノックされ、マリクはもどかしくて不満の声を上げた。
早く入れてほしい。中を掻き混ぜてほしい。その後に受け入れる指よりも遥かに太い物のために、解してほしい。
上を向いたペニスの先端から先走りの液が漏れてエプロンに付着する。

「お前の裸エプロン姿のおねだりとか。スゲー贅沢」
「は、あっ?!ふざけるならもうやめるぞっ!」
「ふざけてねえよ。つーかハゲが見たらブッ倒れるんじゃねえの、この光景。長年仕えてた主がエッロい格好で男にナカ掻き回されるの望んでる姿なんてよォ」
「…っ今リシドは関係ないだろ…っ」

マリクの肉茎がぴくんと跳ねる。バクラは行為の最中たまにこのように家族の名前を出してからかってくるのだが、その度にマリクの若い身体は熱くいやらしく火照っていった。
姉とリシドは、まさか自分が滞在中の日本で、それも同棲を提案してきた了のマンションで彼の持つ千年アイテムから消え去らなかった存在とこんな関係になっているだなんて、夢にも思っていないだろう。
バクラとの関係は誰にも話していないので、家族に対しての後ろめたさが常にマリクの心の中にはあった。しかしそれ以上に、その後ろめたさがマリクの興奮を底上げする麻薬的なスパイスとなってやめられないのだ。
色欲を全身に浮かばせたマリクは、ほんの僅かな動きだが、しかし淫蕩に身体をくねらせ、バクラを誘引した。
室内の淫気が上がり、バクラの雄の気配が一段と強くなったような気がした。






恥ずかしさよりも体内に渦巻く欲が勝ったマリクの淫らなアピールは、脳天まで痺れさせた。
何歳も、いや、何千歳も年下の恋人は、このようにいつもバクラの肉欲を煽ってくるのだ。しかも、自身の価値が分かってないというのだから本当にタチが悪い。
バクラの肉芯はトランクスの下で硬く聳え勃ち、亀頭から我慢汁を溢れさせていた。

「ちゃんとしてやるからな」

興奮した自分の声は宿主である獏良了の声と同じ物とは思えなくて、ガキかよオレは、と苦笑したくなった。
褐色の柳腰を引き寄せ、ディープキスをしながらマリクの唾液で濡れた指で窄まったアナルを撫で、つぷりと指を滑り込ませる。
一瞬マリクが身を捩り重なった唇を離そうとしたが、バクラはそれを許さずしっかりと腰をホールドして舌を絡めた。一秒たりとも離してやるつもりはなかった。

「むふ、むっ、うぅ…ンンん…」

熱く締め付ける肉壺の中にじわじわと指を入れ進めていく。押し返してはくるが決して拒絶まではしてこない、マリクの胎内。
じっくりたっぷり解してやりたい思いと、一刻も早く猛るペニスを押し込んで滅茶苦茶に腰を打ち付けたい思いとがバクラの中でせめぎ合っている。
まだなんとか理性があるバクラだが、深い口付けをしながら身体を密着させマリクの後ろを解すという行為は、いつ本能が打ち勝ってもおかしくなかった。
まさか一人の人間にここまでハマってしまうだなんて。盗賊だった頃の自分が見たら笑うだろうか。それとも、歯軋りしながら羨ましがるだろうか。
指の根元まで進入させ、ぐりっぐりっと掻き回す。マリクの全身がビクビクと跳ねたが容赦なくナカで指を動かした。

「むぐぅっふむっうぅん、うふぅ、んっんっむぅうっ」

鼻から漏れ出るマリクの快楽を堪える喘ぎが、限界まで勃ち上がった男根を更に刺激してくる。
気付けばマリクの汗ばんだ手はバクラの背に回っていた。バクラは押し込んだ指で前立腺を強く抉った。

「んー!んぅううううううっ!!!んふっんふっふ、む、ぅ〜〜〜〜…ッ!!!!!」

強烈な刺激にマリクの身体が戦慄く。濃厚なキスをしながらより強く前立腺をぐりぐりと指で攻め上げた。

「むぐぅ!むふぅ!〜〜〜〜っぷはあッ、あっあ〜〜〜アァ〜〜〜…!!やだぁっアアアッあ〜〜〜!あ〜〜〜!!」
「はあっ、お、いマリクっ勝手にキスやめんじゃねェよ…ッ!」
「ば、かっばかバク、らぁっ!あ…〜〜うぅうう〜〜!!〜そこっ駄目だッやめっやめろっ!ひ、い、ぃっ、あぁアッ…〜〜〜〜!!!」

前立腺への強すぎる刺激にマリクはがむしゃらになって唇の交わりを解き、バクラに抱き付きながら悦楽の悲鳴を上げた。
情欲を煽るマリクの濡れに濡れた嬌声。
キスを中断されたことに苛立ったバクラだったが、マリクの感じ入ったその声に怒りは一瞬にして鎮まり、喉をごくりと鳴らして指を激しく抜き差しした。

「ひぃっ!!!い、い、あぁっ…だからっ!んっ!だ、めだって言ってる…だろっ…!ふうぅっううっう、うあああああ…〜〜〜〜っ!!!!!」

びくんびくんと腰を跳ねさせながらマリクはいやらしく喘ぎ続ける。十六歳という若さでこの淫猥さはバクラも舌を巻くほどだった。
いったいマリクはどこまで猥らに成長していくのだろうか。楽しみで仕方がない。
女も男も惹きつけ魅了し欲情させてしまう恋人。他の人間の元へ行ってしまうのではないか、などという恐れはこれっぽっちもなかった。何故ならバクラはマリクを手放す気など毛頭ないからだ。

「ひい、い、イくっ、イっちゃうから、はな、せっ、ああっアアアッ!んああっあはァッもっもう掻き回すなっ…!!!」
「一回イっとけ。これで終わりじゃねェからよ」
「あっ、あ、ん、ん…バクラっ……!」

低く囁いてやると、喉を鳴らしたマリクが身を委ねてきた。しっとりと汗ばんだ頬にキスをし、二本の指を狭い肉路にずぽずぽと出し入れしてやる。

「あ、ァ、も、出るっ、あはっ、は、んっ、イク、い、いっ……!んぅううう〜〜〜っっっっっ!!!」

ぶるぶると身体を震わせたマリク。放たれた精液はエプロンに勢いよく飛び散り、生地を伝って数秒後、べと、ぼと、と床に落ちた。
身体を密着させていてその様子を見ることはできないが、垂れ落ちた重たい水音だけでも想像するのは容易かった。

「ハ、ぁ、は…はあ…バ、カ…無理矢理イかせる奴があるかっ…!」

抱き付いたまま文句を言ってくるが、射精後の何ともいえない掠れた声で言われても、こっちは興奮するだけなのだが。
肉壺で温まった指を引き抜くと、アァ…ッ、とマリクは官能的に喘いだ。
バクラは辛抱堪らず自身のトランクスを下げ、マリクの手を掴み怒張を握らせた。

「しゃぶってくれるだろ?」
「……!」

掴んでいたマリクの手をそっと離しても、バクラの勃起したペニスを握る褐色の掌は離れない。
バクラは、フッと笑ってマリクの耳に口付けた。

「テメェのケツは言うまでもなくイイがな、唾液まみれの口の中も堪んねェんだよ。チンポが溶けちまうかもって心配になるくらいにな」
「バ、カっ!!黙ってろ貴様は!」
「なんだよ。ホントのこと言っただけだろ。あー、でもオレ様のチンポが溶けたら子作りできなくなっちまうなァ、マリク?」
「子づッッ…!!?だからっ!もう黙ってろってば!!…んっ、はぁ、ぁむ」

からかってやると尻をもじもじと揺らしながらキッと睨んできたマリクだったが、膝をつきバクラのトランクスを膝まで下げて肉棒の先端を唾液でトロトロの口にぱくりと招き入れてきた。

「…ッもっと根元まで……そうだ。舌も使ってな」
「んぐ、む、はぷ…んむぅッ…」

熱く滑ったマリクの咥内。生暖かい粘膜に包まれ、猛り狂ったバクラの肉棒は一瞬にして大量の唾液でコーティングされる。
じゅぷ、ちゅぽ、ぐぽっぐぽっぐぽっぐぼっ
裸にエプロンを纏った年下の恋人が、耳まで朱く染めて卑猥な水音を立てながら自分のモノにしゃぶりついているこの光景。見下ろすバクラの背筋にゾクゾクと悦びが走る。

「む、ん、う…はむっ、んふ、んふぅ、むぐ、んっんぐっむぶっんちゅっんふッ…!」

徐々に速くなっていくマリクの顔の動き。荒い鼻息は息苦しさからか、それとも下着の中で蒸れた下腹部の男のニオイを嗅いで興奮しているのか。もしくは息苦しさも雄臭も、どちらも楽しんでいるのか。
射精感が高まってきたバクラは、フェラチオに没頭するマリクの髪に指を差し込んで後頭部にむかって梳かした。

「…もういいぜ。口、離しな」
「んむっ…はあ…っ……なんだよ…まだイってないだろお前…」

夢中になっていた口淫を中止させられて不満顔のマリクが、口腔から引き抜いた男根を手でつくった筒で扱きながらバクラを見上げてくる。
アイラインに囲まれた薄紫色の大きなマリクの双眸は涙で薄っすら覆われていて、身体の芯まで欲情していることがはっきりと分かる。バクラは、三千歳以上年の離れた恋人を壊れるまで抱いてしまいたいと狂おしく思った。
暴走しそうな気持ちをなんとか鎮め、乾いた唇を動かした。

「…さっき言ったろ?早くテメェにチンポぶち込みてぇって。これだけ濡らしてくれりゃあ充分だぜ。それともなにか?ケツの奥の奥で中出しされるより、口ン中でオレ様の熱いザーメン飲みたいっつーなら、別にそれでもいいけどな」

ニヤけながら笑って言ってやると、マリクは目を丸くした後、握っていたペニスから慌てて手を離した。

「ボクはそんなこと言ってない!!ば…バクラが挿れたいんだったらそうすればいいだろ……ッ」
「ああ。じゃあ遠慮なく挿れさせてもらうぜ。お前のキツい締め付けのケツマ×コの中に精液ぶちまけることを考えただけで、今すぐにでもチンポ爆発しそうだからなァ?」
「ッ今日の貴様はいちいち卑猥なセリフを言わないと気が済まないのか?!聞いてるこっちが恥ずかしくなる…っ!!」
「オイオイ。恥ずかしがる必要はねェだろ。これはままごとだぜ?中途半端に演じるより役になりきっちまったほうが気持ち良さも数段上だと思うがなァ」

マリクの唾液でべとべとに濡れたペニスを勃起させたままトランクスを脱ぎ捨て床に膝をつき、バクラはマリクと向き合った。
紅潮した手触りの良い褐色の?を撫で、唇を重ねる。

「好きだろ?気持ちイイの」
「……でも、こんなにいやらしいままごと、普通はやらないだろ」
「だから興奮するんじゃねェか」
「あッ……なぁ、本当にこんなところでするのか…?」

発情した身体を引き寄せ四つん這いの体勢にさせると、顔だけ振り返って見つめてくるマリク。不安と興奮が入り混じったその表情は、バクラの男根をまた刺激する。
そういえばキッチンではまだ一度もヤったことがなかったか、とひくひくと妖しく蠢くマリクのアナルに亀頭を擦り付けながら思った。

「残業疲れの夫の溜まった性欲を満たすために、エロい身体を使って裸エプロン姿でキッチンで全てを受け入れる褐色淫乱妻。な?ゾクゾクするだろ?」
「だっ誰が褐色淫乱妻だ!ボクはそんなんじゃ…!」
「ハッ。こんな役、テメェ以外にいねぇだろうがよッ…!」
「あっ!!あぁああああ…っっっっ!!!」

狙いを定め一気に肉刀で貫くと、マリクは肩を震わせながら大きく声を上げた。
肉ヒダはペニスを熱くキツく締め付け絡みついてきて、気を抜けば即射精してしまいそうなほど気持ちが良い。ぐ、と歯を食いしばったバクラは根元まで埋め込んだがすぐには動けなかった。
血管の浮かび上がった太く硬い幹を呑み込んだマリクの後孔は皺が無くなるほど拡がっている。ぴたりと密着した互いの肌の色の違いに、バクラの下腹部に強く熱い痺れが走った。

「ば、かぁっ…!一気にっ全部入れるなッ…!うっ…あ、あ…!!」

内臓を押し上げる圧迫感に耐えながらなんとか絞り出されたその声に、バクラはごくりと喉を鳴らした。
男に興味などもったことがないバクラだったが、マリクだけは別だった。というより、このマリクを見て欲情しない男がいるなら会ってみたいとさえ思う程だ。
マリクに長年仕えていたあの男も、おそらく疚しい気持ちを抱いていたことだろう。バトルシップであの従者がマリクを見つめる目にはそんな色が含まれていたのを、バクラは見逃さなかった。
想いを必死に押し殺しながら従者として側にいただろうに、その想いを抱いていた墓守の一族の末裔である主人が墓を暴く盗賊と肉体を交わらせているなど、知ってしまったらどうなるだろう。
あのハゲなら激昂して殺しにかかってくるかもしれないな、とバクラは目を細めた。もしくは一度は手を出しておけばよかったと激しく後悔するだろうか。どちらにしても面白いことに変わりない。

優越感に浸りながら、バクラはマリクの尻をがしりと掴んだまま片膝立ちの体勢をとり、狭い肉路をずぶずぶと抉った。

「あひっ、あ、あ、はぁあ、あぐっうぅんっ、ああっぁあッヒッ、いっ、いぃいっ」

片膝を立てているお陰でよりマリクの方へと体重をかけることができる。つまり、より肉壺の奥深くへと力強くペニスを突き入れることができるのだ。その証拠に、一突き毎にマリクの全身はビクンビクンと跳ねている。

「は、すげー気持ちイイぜ、マリクッ…」
「はぐっひぃい、い、あはぁっ、アア、バクラっ奥っ苦し、い、あ、あーっ、あーーっ…!!!」
「ヒャハハハハ!苦しいじゃなくて気持ち良いの間違いだろうがよ!」
「ま、バ、あっあっあっそんなゴリゴリって、嫌だっあうっアッやだっやだっや、あぁああああ〜〜〜ッッ…!!!!」

バクラが激しく腰を前後させる度に肉と肉がぶつかる音がばちんっばちんっとキッチンに響く。

「おらっおらっ!仕事終わりの夫のチンポの味はどうよマリクッ!!」
「ひうっはぐっアッアッアアッあ…!あ…!!」

ずぼっずぼっぐちゅっぐちゅっズブッズブッズブッズブッ!!
剛直がアナルをぐぼぐぼと犯すその激しさにマリクは上半身を支える腕の力を徐々に無くしていき、キッチンマットに頬をつけ尻を高く上げる体勢になった。
引き締まりながらも柔らかい尻肉と括れた腰と汗が浮かび上がった背中の碑文。腰の位置で結んでいた白い薄手の生地のエプロンは、尻を上げた格好の為くしゃくしゃになり背部までずれている。目に映る全てが、バクラを熱くさせる。
は、は、と短く息を吐きながら、バクラはピストンを止めて手を伸ばし、後背位では見えないマリクの乳首を強めの力でくりくりと摘んだ。

「あ!そこはっいまっダメ、だ、んっ…あはぁ…!!!」

腰をいやらしくくねらせながらマリクが色っぽく喘ぐ。
マリクの乳首は完璧に開発しきっているので、どのように弄ってやれば堕ちるか、開発者のバクラは分かりきっていた。

「ほら…役になりきれってさっき言ったばっかじゃねえか」
「あふ、あ、う、アアッ…や、く……?」
「そうだ。今だけはテメェはオレ様の褐色淫乱妻だ。だからエロいセリフもエロい仕草も、何をしたって役になりきってる所為にしていいんだぜ」
「そっ、そんなこと言われてもボクはッ…!…あっ、なんでそんな触り方っ、や、やうっ」

甘く勃起していた乳首を摘んでいた指を離し指の腹で乳首の先端をすりすりと撫でる愛撫に変更すると、マリクは頭を振っていやいやと嫌がった。
乳首を強く摘み上げられた後のこの微弱な愛撫はなかなか辛いものがあるだろう。
絶え間なく湧き上がってくる狂熱と肉体が結合した熱さにこめかみから汗が垂れてきたが、構わずバクラは勃起乳首の先っぽを円を描くように指の腹で撫で続けた。

「どうしたマリク。こんなんじゃなくてもっと強く摘んで欲しいのか?」
「っ…!!!!う、うん…強く、してほしい…」

額をキッチンマットに擦り付けながら弱々しく懇願してくるマリク。恐らく役になっているつもりなのだろうが、興奮しきったバクラはこれくらいでは満足できなかった。
ぎちぎちに絞り上げてくる腸壁の中でペニスを滾らせたまま、マリクの乳輪を指の爪先でくすぐる愛撫へと変更した。

「ちがッ、あ、そんなのじゃなく、て…ンンっく、ふ…ッ」
「オレ様の淫乱な妻なら、どう言えば旦那が悦ぶか分かるよな?」
「ひ、ン、あは…ぁ…!!」
「テメェの口から、テメェの言葉で、オレ様を悦ばせてみせろよ。なぁ。頭の良いテメェなら分かるだろ」
「はあっ…!あ…!」

後孔でバクラの物を銜え込んだまま胸から走る微弱すぎる快感のもどかしさに耐えるマリクの肩が、かたかたと震えている。
屈服したくない思いとラクになって快楽に浸りたい思いとがせめぎ合っているのだろう。
怒張を動かしたい思いを我慢しながら乳輪への弱い攻めを続けていると、ついにマリクが降参した。

「バクラっ!お願いだからボクのっ、ボク、の…ッいやらしく勃ったエッチな乳首を、バクラの手でいっぱい摘んだり引っ張ったりして、き、気持ち良くさせ、て…!」

バクラが勝手に考えた大人のままごとの役になりきっている所為にして、恥ずかしさよりも熱い快楽を求めて乳首への激しい愛撫を懇願したマリク。

「ククッ、上出来だ。よく言えたなマリク。ほら、ご褒美だぜ」

一言一句聴き漏らさなかったバクラは、マリクの腸内に突き入れている自身の隆起に更に血液が集まっていくのを感じながら、マリクの勃起乳首を思い切り抓り上げた。

「アッ!!んんんんんんんーーーっ!!!!」

びくん!と汗ばんだ褐色の身体が、電流が走ったかのように跳ねる。
きゅむっぎゅっきゅうっギュッぎゅうぅっ
膨らんで尖りきったマリクの乳頭を容赦なく引っ張り、捏ね回し、扱く度に、アナルがきゅうきゅうと締まった。

「いっ痛い!バクラぁっあっあっ乳首ぃっ!あぅううっうふぅっ、うっううっ乳首そんなに引っ張ったら痛、いっアッあはァアああああっ!!!」
「ハッ、嘘吐くんじゃねえよ。痛ぇだけならオレ様のチンポ銜え込んだままのケツ穴が嬉しそうに締まるハズねェだろうが、淫乱マリクちゃんよお。あ?好きなんだろ?痛いぐらいに乳首嬲られる方が!」
「あっあっあっうぅぅぅっ!」

後背位に片膝付きの体勢で右手でマリクの右乳首を攻めていたバクラは、褐色の美尻を掴んでいた手を離しマリクに覆い被さるようにして左手をキッチンマットにつき、伸ばせるようになった右手で今度はマリクの左乳首をぎゅうっと摘み上げた。

「〜〜〜〜ッす、き…こんな風に乳首いっぱいされるの、好きぃっ…!あ、ふ、あっあっアッやっ、痛いけ、ど、ああぁあああっ、キモチ、気持ちイイよおっ…!あ、ボクのやらしいちくび、もっと、もっと触って、バクラぁあっ」
「ヒャハハハハハ!エロい女房をもつと大変だぜ!ところでマリク、コッチも忘れてくれるなよ?これが本命なんだからなっ…!」
「ウッ、あ゛、あああっ!!!!!」

ずっと挿れっぱなしだった、限界まで勃ちあがった剛直を寸前まで引き抜いてズンッ!と一気に根元まで穿つと、乳首への強い攻めに集中していたマリクがカハッと息を吐いた。
片膝と片手を床についているのでバランスの取れるバクラはマリクの乳首を摘んだまま、今まで動かすのを我慢していた分滅茶苦茶に腰を激しく打ち付けた。
ばちっバチュッグチュッどちゅっどちゅっぶちゅっ!!ズボッズボッぐぼっぐぼっぐぼっ!!!
ペニスを引き抜こうとすればいやらしく吸い付き、思い切り捻じ込めば熱く絡み付いてくる16歳の腸壁。
三千年前盗賊だった頃に何人女を抱いたかなど覚えていなかったが、淫液滴る女の膣より、いま自分が夢中になって抱いている同性のマリクがこれまでの誰よりも最高だと、バクラは熱くて溶けそうな心の中でそう思った。

「ひんッ、ひ、おっ、おッ、ふうっ、奥っまた奥まできて、るっ!バクラのっあっ!バクラのペニスがボクの奥までぇっ!アンッアンッアッアッアッ!!」
「あー…?ペニス、じゃねえだろ…ッ!オレ様が満足する言葉で言ってみろ!言えマリクっ!!」
「ひぃいイイイイイッ!!!!!」

乳首をぎりぎりと捻り上げながら怒張をマリクの一番奥深くまで何度も打ち付けるバクラ。
そのあまりの衝撃に、キッチンマットに乗っていないマリクの片膝と片肘が汗でずるずると滑っている。何度も腕と脚の位置を戻しながら、顔を上げたマリクが泣きながら絶叫した。

「ひっく、ぅぐ、ちんぽっ…!チンポ!バクラのチンポにボクのナカがぐちゃぐちゃに全部犯されてるっ!!うっ、うーっうぅうううっ…気持ち、イイよおっ…!!あふッあんっあんっちくびもチンポもどっちも気持ち良いよぉッ…!ば、バクラぁあああっ!!!ボクのケツマンコ、もっと、もっといっぱいチンポで突いてぇっ!!!!」
「ハァッ…はあっ…!ハハッ…いいぜぇマリクっ…!!!」
「あひッ!ヒィッいっいっいっあふっうぐっううっうーっ!うううぅぅぅっ!!やっやっやあっアッアッアッうんッうんんんんんっ!!なっ、ナカッ!こんなにされたらボクの中がっバクラのチンポの形になるっカタチッ変わっちゃうぅ…ッッ!」
「ああッ?!何の問題もっ!ねェだろうがッ!テメェはオレ様の女房なんだからよ!!」

マリクの恥じらいの欠片もない直接的な言葉にバクラは耳が熱くなるのを感じながら、恋人のおねだりに応えるべくより激しく大きく腰を動かした。
バクラの汗が、マリクの反った背中に垂れ落ちる。抱き締めているマリクの身体も汗まみれで、どれだけ激しいセックスなのかを物語っていた。

じゅぼっずぼっ!ずぶっズブッズブッぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ!!

「あっあーーー…!!!ばく、らぁあ…!も、イく、イキそう、あっあっあっあっ、ひっヒッ、ひぃっ、あんっあっア…ア…!!!」
「くっ…あ、ハァッ…!じゃあしっかりっ中出しキメて、孕ませてやらねえとなぁ…ッ!!」
「えっ…な、なに、バク、あっ、ーーーーーーーーーーーー〜〜ッッッ!!!!!!」

ズシンッ!!!
喘ぎながら限界を伝えられ、随分前から射精するのを耐えていたバクラは、腫れ上がるほど弄っていた乳首から手を離し上体を起こしてマリクの腰を両手でがしりと掴んだ。そして、渾身の力でマリクの腸内を貫いた。
ひぃひぃとマリクが涙声で喘ぎ続ける。それでもバクラは構わず肉棒を猛獣の如く穿ち続けた。興奮で塗り潰されたバクラの脳内は、マリクの中で射精することだけしか考えていなかった。

「あっ!あんっ!うぅんっ!はひっはっハァッ、あ!あぐぅっ!ば、バクラぁっ、うっ、ふぅうううっ!」
「マリクッ…マリクっ…はあ…!ハァッ…!!!絶対ェ…孕ませてやるからな…っ!!」
「はあっあああっバク、ラっ」
「テメェの、中、ザーメン浸しにして」
「はぐ、う」
「オレ様のガキを、仕込んでやるぜ…っ!絶対ェ、外さねえ…っ!!」

途切れとぎれになりながらも淫猥な言葉をマリクにかけ続ける。
同性のマリクに対し、バクラは自分が、ままごとの役になりきって言っているのか本心から言っているのか分からなかった。ただ、何も考えられないこの淫熱に溺れた状況ですらすらと声に出てくることが、全てだった。
そんなバクラに触発されたマリクも、目尻から涙を零しながら声を上げた。

「うんッ、あっ、ほしいっバクラの子ども欲しいっ…!ァッアッアッアッだからっ出してっいっぱい、バクラの精液ッボクのナカにいっぱい打ち付けて…あ…あはぁ…ッッ!!」
「ああっ、嫌っつっても止めねえからな…ッ!ひゃは、ハ、じゃあそろそろ、イクぜ…!っぐ、く………ッッッ!!!!」
「あっあっあっバクラッうっうっううっんふっンンッボクも、イク、イっちゃ、う、う…〜〜〜!!!!!」

ばちんッとマリクの尻と下腹部を密着させたバクラは、膨張しきったペニスからどくどくと精液をマリクの中に注ぎ込んだ。少しでも奥に噴射できるよう、マリクの腰を爪が食い込むほどに掴んだまま。
汗を浮かばせ高く上げられたマリクの美尻が、バクラの大量のスペルマを内部に吐き出される衝撃と自身の射精でぴくんぴくんと痙攣している。
脳に白い球が弾けるのを感じながら、ぐ、ぐ、とバクラは腰を押し付けた。まだバクラの射精は続いている。

「はあっ…ハァッ…孕めっ…孕めマリクッ…!!!」
「うっ、ふ、うーーーうーーーーッ…!!」

顔を伏せたマリクが苦しそうに、しかし色っぽく低い声を洩らす。濃厚な熱い大量の精液が注がれるのをしっかりと味わっているようだった。

「っは………は……はあ……ハ……」
「あ…ヒッ…うぅ…ん…ん……あ、ばかっ今っそこやめろっ…!」

長かった射精がようやく終わり肉茎をずるりと引き抜いた。マリクのアナルがバクラのペニスの太さにぽっかりと開いていたので、注ぎ込んだ精液が出てきていないか親指を突っ込んで中を見ていると、マリクが弱々しく抵抗してきた。

「なんだよ…オレ様の子種を…しっかり受精したかどうか…見てただけじゃねえか…」
「ばかバクラっ…!…あっ、あふ、んむ、んん…」

腰に纏わりつく射精後の脱力感に耐えながら、床に突っ伏したマリクの上半身を引き起こし抱き寄せ、キスをする。
互いの唇に緩く吸い付き合いぴちゃぴちゃと舌を絡ませるそれは、激しく動きすぎて脳が働かない今の2人にとって丁度良い心地良さだった。
キスをしながら汗だくのマリクの肌を脇腹から太腿にかけて何度か往復させて撫でていたバクラだったが、乱れていた呼吸も落ち着いてきたので、白いエプロンで隠れているマリクの股間部分に指を滑り込ませた。

「エプロン、べっとり濡れてるぜ。そんなに気持ち良かったかよ」
「そっ…れは、精液だけじゃなくて沢山汗をかいたからだ!!…はあ、シャワー浴びてこよ…」
「はぁ?何ぬかしてやがる」

力の入らない艶めかしい身体でなんとか立ち上がろうとするマリクの腕をバクラは掴み、阻止する。

「だって汗だくで気持ち悪いじゃないか。バクラだって浴びるだろ」
「おいおい。まだ終わってねェだろうが」
「何が」
「ままごとだよ」
「………は!???」

何のことか本当に分かっていない様子のマリクにままごとは続行していることを言ってやると、愕然として手を振り払われた。
美しい宝石を思わせるアメシスト色の瞳が、信じられない、とでも言いたげにバクラを睨んできた。

「一晩中抱くっつっただろーが。しかもテメェから言ってきたの、忘れたとは言わさねぇぜ」
「あれはっ!貴様がままごとの役になりきれってしつこいから、ボクは仕方なく言っただけで…!あんなの本気じゃ…!大体一晩中だなんてそんなの無茶苦茶だし…!」
「知らねえよンなもん。テメェが言ったから、オレ様はもうとっくにその気になってんだよ。それに」

エプロン越しのマリクの腹部をバクラはそっと撫で、ニヤリと笑った。

「一発だけじゃ不安だから一晩かけて確実に孕ませてェしな」

かぁああああっとマリクの美貌が一瞬にして紅潮する。
バカ、やら、ボクは男だ、やら、子どもなんてできないのに、やら赤面しながらもごもごと言っているが、絶頂間近の理性を投げ捨てたお前がどれだけオレ様を煽る淫らな言葉を吐いたか分かってんのかコイツは、とバクラは思わず苦笑した。
居心地が悪そうに顔を背ける恋人の顎を指で持ち上げ自分の方に向かせて、マリクが好きな、トーンを落とした声で囁いてやった。

「ベッド行こうぜ。キッチンでこのままヤるのも悪くねェが、マット敷いてるとはいえ床が痛かっただろ」
「…う……まぁそうだけど……」
「な、いいだろマリク。正直一回だけじゃ足りねぇんだよ。テメェの味を知っちまったらな」
「……〜〜好きにしろよもうっ…!」
「ヒャハハ!好きだぜ、テメェのそういうところ」

まだ力の入らないマリクの身体を支え一緒に立ち上がる。部屋に向かって一歩ずつ歩く度に、ふ、ふぅ、と皺が寄った白いエプロンを着たままのマリクから甘い吐息が洩れる。
バクラ(了)の部屋に辿り着き、ベッドにマリクを寝かせる。薄い唇を尖らせたマリクがぽつりと呟いた。

「…夕飯はどうするんだよ。ボク、お腹空いてきたんだけど」
「そんなの好きな時に冷蔵庫のモンをテキトーに食うか出前でもとりゃいいだろ。…さてと。じゃあ淫乱奥サマの腹が減りきる前に二回戦といきますか」
「だ、から!ボクは淫乱妻じゃないってば!そんなこと言う貴様が性欲まみれの変態鬼畜夫だろ!」
「ハ。なんだっていいぜ。テメェと夫婦のオママゴトができるならよ」

クッと笑ってバクラもベッドに上がる。汗まみれの互いの肉体を密着させて、再び濃厚なキスをした。
一晩中抱かれ続ける自身の身体より腹の空き具合を心配する余裕がいつまで続くかねぇ、と内心笑いながら、朝までに何度マリクの中で射精してやろうか、とバクラは濡れた肉舌を伸ばしてくるマリクに舌を絡ませることで応えながら思ったのだった。





【END】



けいさんの誕生日にプレゼントしたバクマリ小説です!
『嫉妬するマリク』でリクエストをもらっていたのに完成までに二年近くかかるという…;(土下座)
しかもお願いしてサイトにUPさせてもらいました(感謝の土下座)

嫉妬するけどやっぱり快楽に流されちゃうマリクと、孕ませたいほどマリクを欲しているバクラが書けて楽しかったです!

あらためて誕生日おめでとうけいさん☆★☆