待てない犬




三千年前。
盗賊の王としてその名を馳せ。

そして現代。
三千年前に同じ時代(とき)を生きた古代エジプト王をあと一歩というところまで追い込んだ男は。

今、大変な苦行を課せられていた。



(ヤりてぇ…!アァァァ犯してェ犯してェブチ込んで鳴かせてアイツの唾液を啜りてェッ!!!!)

雪がちらちらと姿を見せ始めた一月。
そう、今は学生の冬の楽しみ、冬休みの真っ只中。
普段は一緒にいることの出来ない平日の昼間も、時間を気にせずマリクと話すことも触れることも可能で、バクラは内心「冬休み万歳!」だった。
冬休みを手に入れた張本人の獏良はどうやら寒さに弱いらしく、折角の休みだというのに遊戯達に遊びに誘われても断わって完全引きこもり美少年となっていた。


こんなにも有り難ぇチャンスを逃すワケにはいかねェだろ!
一日中!!あの!色気だだ漏れの身体を食い尽くしてやるぜえ!!!

マリクの事を考えるといつも股間のディアバウンドは臨戦態勢のバクラはすぐに実行に移す。
それが四日前のこと。
獏良に頼むとあっさり体を貸してもらえたバクラはその日、朝も昼も夜も関係なくマリクと肉体を交わらせ続けた。
もう無理だ、嫌だ、とこれ以上の性交を拒むマリクを言葉と体で攻め続け、マリクが意識を手放すことで長い一日は終わりを告げた。
翌日。
今日は外で食いてぇな、と腰を痛ませているマリクを無理矢理連れ出して……と、ここから先は賢明なオネエサマ方の想像力に任せるぜ?

色々な場所での行為を堪能したバクラは立ち上がることすら出来なくなったマリクに肩を貸してやって帰宅したのだが、
ベッドに下ろした瞬間
「しばらくセックス禁止だ馬鹿バクラッ!!!」
と激憤の声と共に部屋から追い出されてしまったのだ。


ど、どどどどどうせ濡れて疼く身体に耐え切れずにオレ様に縋り付いてくんだろ、ヒャハ、ヒャハハハハハァ!!!
などと声を震わせながらもマリクの言葉を軽く受け止めていたバクラは後悔に襲われることとなる。



(守りが徹底しすぎだろ…ッ!!)

それからこの二日間、出ようとしてもマリクの泣きながらの頼みを聞いた獏良は決して出させてはくれず。
眠りについた獏良の体を乗っ取りマリクの部屋に侵入しようとすれば千年ロッドの力で絶対防御。
同じ千年アイテムの力でようやくドアを開けるも、ベッドで眠るのは闇人格。

バクラは獏良の心の中でがくりと膝をついた。

今回のアイツは本気すぎる…!!
ヤるどころか触ることすら出来ねぇじゃねえか!!!

『なあ宿主!!頼む!マリクんトコ行かせてくれ!このままだとオレ様の命が危ねえんだよォッ!!』

「何言ってるの。お前野放しにしたらマリ君の命が危ないでしょー」

『ァアッ?!宿主はオレ様よりマリクのがカワイイってのかよオイ!?』
「え、当たり前じゃん」

ああクソ確かにマリクは可愛いよなァ…!!!
言った自分が馬鹿だったぜ。
バクラは地面に手をついて落ち込んだ。

何とか…何とかしてマリクを味わう方法はねぇのか………ッッ?
爪が肉に食い込むほど手を握り締める。
ああでもねーこうでもねーと案を練る中、頭の片隅でチリリと金属の擦れる音を思い出した。


……お?おぉおお?!
ウォオオオオッ!!!!
そういやオレ様チョーいいモン持ってたじゃねェかァ!!!!
( ゚∀゚ )ヒャッハァ!!!




『頼む。30秒、いや、20秒でいい。オレ様を出させてくれ宿主!!』



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ザァアアアアア………
キュッ、…ピチャン…

勢いよく身を打つシャワーを止めてマリクはナイロンタオルに手を伸ばす。
獏良宅に来て初めて入浴した時、
「ボディブラシがないじゃないか。何だ…これで洗うのか?…いった!痛ぁッ!!クソッ日本人の肌はメタル化でも施してるのか?!!!」
だったマリクもなんとか順応していた。
ねっとりした薄桃色のソープをポンプから出して泡立てる。
すぐに白い泡が立ち、マリクは腕を擦り始めた。

ゴシュゴシュゴシュ

(やっと腰の痛みもとれてきたか……全くバクラの奴!)

すらりと長い艶めいた褐色の肌が泡に包まれていく。

(首も…うわぁ、昨日はもっと酷かったけど、やっぱりまだとれてないな)

首に咲いたいくつもの内出血の痕。
沢山の愛(というより動物並みのマーキング)を受けた証だった。
脇、胸、腹。
撫でるように洗っていくと敏感な肌はひくひくと反応する。

(あーもーッ…ボクもアイツのこと言えないじゃないか。うぅ…セックスする度に体がだらしなくなってる気がするけど…気のせいだよ…なぁ。うん、そうに決まってる!)

己の醸し出す艶が日に日に増していっていることなど分かるはずもなく、溜め息を吐きながらながら股関節を洗う。
こんなところまでうっすらと朱い花が散っていた。
わしゃわしゃと足の指の股まで洗い終え、マリクは顔を赤らめながらシャワーのレバーをひねった。


ま、まあボクもするのは嫌いじゃないから……だ、だからといって好きでもないけど!!!ゆ…許してやっても……いいかな…






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「あれー…」
「どうしたんだ獏良?」

顎に手を当てながら首を傾げている獏良。
マリクは風呂上がりに棒アイスを口に含んでコロコロと舐めながら壁に凭れていた。
うーん。奥歯に引っ掛かった物に悩むような様子で獏良が唸り続ける。

「アイツがさぁ」
「ッ!げほっ、ん、うん?」
「すっごく幸せそうな顔で鼻血出しながら悶え死んでるみたいなんだ。なんだか気持ち悪いよねぇ?」

ぶるぶるぶるぅッ
背筋に悪寒が走ったのか、大袈裟に体を震わせた獏良がクッションを抱きながらマリクに同意を求めてきた。
鼻血を出すだけでも珍しいのに悶え死んで…いる……?い、一体なにがそこまで奴を駆り立てているんだよ…!!

正体の分からないものに微かな嫉妬を覚えたマリクはザクッ!とアイスを噛み砕いた。


「獏良っ!!!」

「なななな何マリ君?!!!」

「アイツに言っといてくれ!〜〜〜〜っ絶対に!本気で!許さないからなって!!!」







〜一方その頃バクラは〜


「うっ、ごほブファッ!(鼻血)ヤベェな…タオルにパラサイトマインドなんざするんじゃなかったぜ…!!
アイツの艶肌ダイレクトアタックは効いたぜぇハアハァ(*;´Д`)タマンネー!!!!」



外のことなど露知らず、呑気に勃起中だった。
_ト ̄|○